現代アートがよくわからないので楽しみ方を教えてください

現代アートがよくわからないので楽しみ方を教えてください 9つの型で「なにこれ?」が「なるほど!」に変わる 鈴木 博文

読書時間2時間15分(6日間)
文章の難易度★☆☆(読みやすい)
内容の難易度★★☆(ふつう)
古典だけでなく現代アートも楽しみたい人におすすめ度★★★

今年の9月、初めて大塚国際美術館に行った。
西洋名画 1,000余点が原寸の陶板で展示されており、日本に居ながらにして世界の美術館の作品を見たり触ったりという体験ができる夢のような美術館である。
徳島県鳴門市にあるので、私にとってはそう何度も簡単に行けるものではなく、何とか1日で全部の絵画を観て回ろうと意気込んで訪れた。
ほぼ制作年代順に作品が並んでいるため、今自分がどのくらい観終わっているのか、ということはわかりやすい。
しかしながら、17時閉館なのに、私の大好きなマネを観、そしてセザンヌに到達したのは15:55を過ぎていた。
そしてピカソに相まみえたのは、なんと16:15を過ぎていたのである。
だが、その時の私はなんとなくほっとしていた。
「ここからは現代美術だから、ぱっと見ではよくわかんないし、とりあえず観ることに価値があるかな」という重要な作品はまあ見終わったよね感があったのだと思う。
そして、最後はほぼランニングになり、有名なモンドリアンの陶板作品を記念に写真に撮ったりしながら、全部の作品を観終わった後にお土産も買い、非常に満足して帰ってきたのである。

前置きが長くなったが、私はここに現代アートに対する意識の問題点が凝縮されているような気がした。
何が描かれているかも一見わからない現代アートは、どこか「わかる人にしかわからない難解なもの」で、とりあえず観てはみたけれどよくわからなくてもそういうものという印象が、一般的に強いのではないか。

この本では、そもそも「現代アートとは何を指すのか」を説明し、現代アートを楽しく読み解き、深く味わうことができるようになる視点として「9つの型」を紹介している。

なんとなくわかりづらいとぼんやり眺めていた作品も「そういうことか」と合点がいくようになる内容だ。
この本を読むと、現代アートを読み解くガイドのような指針が手に入る。

一見ルール無用で自由奔放に見えるアートにも、きちんと「型」といえるものが存在している。
「型」があることで、わかりやすく扱いやすい基準が生まれ、それがかえってより自由な表現を生むきっかけを作っているということがこの本を読むとわかる。
実は「自由」であり過ぎると、その世界は衰退してしまうのだ。
だから、最低限の「型」を知ることで、作品を読み解く力がつく。
「わからないことが楽しい」のではなく、「自分では気がつかなかった世界に、アート作品を通じて触れることで価値観が変わる」のがアートの醍醐味だそうだ。

「人間は物体そのものではなく、物体に付与された意味や情報、概念に価値意識を感じている」とこの本にはあり、これが現代アートを現代アートたらしめているのではないかと私は思っている。

また「世の中の誰もがやっていない状態で、このような表現方法を0(ゼロ)から考えつくか」という現代アートを観賞する上で大切な視点は、アートだけではなく、世界の技術躍進や学問などにも共通しているのではないかと思う。
デュシャンの「泉」が現代アートの幕開けと言われる意味が改めてわかるのだ。

現代アートとは強いて言語化するなら「当時の様子を端的に切り取り表したもの」「当時の社会にとって新しい考え方や世界観を示した表現」「当時の人々の心をつかんだ表現」だそうだ。
私が大好きなマネやセザンヌだって、当時は現代アート的存在だっただろうことが想像できる。

「作品を見ることで何かを感じ、心が動くこと、日々をかえりみることにアートの大きな意味合いがある」とこの本では言っている。
読書も全く同じことが言えると思う。
アートも読書も、なんて素敵な世界なんだろう。