量子力学の100年

量子力学の100年 佐藤文隆

読書時間3時間20分(6日間)
文章の難易度★★☆(ふつう)
内容の難易度★★★(難しい)

正直、この本を読んでも全然わからなかったのが、量子力学の100年だった。
わからないことがわかった、と言ったほうがよいのかもしれない。

知識が浅い私は、量子力学は輝かしい学問のように感じていた。
量子コンピューターの出現により、複雑な計算が瞬時でできるようになったと聞いていたし、半導体やレーザーもこの学問のお陰だし、何よりいわゆる古典物理学で説明がつかなかったことが、量子力学によって新しい理解が叶ったことがあると聞いて、なんて学問の進化とはすばらしいことなのだろうと思っていた。

が、この本を読むとその量子力学のイメージが一変する。
なんとなくほの暗い感じがぬぐえない。
そしてこりゃもう哲学だよ、と思った。
まず、内容が難しい。
これは当然なのだが、私の知識が浅いため、よくわからないことが多かった。
まあそれはさて置いたとしても、難解な世界だと思う。
古典物理学は、なんとなく生活に根付いており、直感でああそうだろうな、ということも多い。
しかし、量子力学にはそれがない。
非常に抽象的だ。

また、当初あのアインシュタインが「神はサイコロを振らない」と言っていたこともなんとなく影を落としている気がする。
量子力学は基本確率論なので、実際は神もサイコロを振るわけだが、あのアインシュタインもそうは思っていなかったのだから、当初物理学者たちの葛藤があって当然だと思う。
古典物理学では説明できないことが発見され、既存の、つまり今までの常識が壊されていくのはさぞつらい面と混乱があったことだろう。

もう物理学というより概念の世界だというようなこともある。
また、もはや哲学領域だろうという、実存の問題や観測者という存在も非常に難解だ。
そして、なんとなく暗さがぬぐえないのは、この100年の間に大きな戦争が起こっていることも無関係ではない。
最新の学問や技術は、戦争があるとそれに活用される。
科学者の中では、それについても葛藤があった人も多かったはずだ。

コペンハーゲン解釈と呼ばれるものがあり、これは量子力学を理解し、応用するための枠組みだそうだが、ほかの解釈も存在するらしく、もう混沌というしかない。
しかしながら、量子のもつれとシュレーディンガーの猫が量子力学を語る上でキーポイントとなることだけはわかった。

そんなこんなで、この本を読んではみたものの、なんだか書いてあることも理解しきれないまま、読み終わってしまった。
そういう読書があっても良いと思っている。