予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 ダン アリエリー

読書時間5時間25分(8日間)
文章の難易度★★☆(ふつう)
内容の難易度★★☆(ふつう)
自分は合理的な完璧人間と思っている人におすすめ度★★★

人間は、科学や医療技術、デジタル技術が急速に進化して、さも賢く、そして合理的に生きられるようになった気になっているが、それはとんでもない気のせいだ。
と言うことがわかる本。

「現金は盗まないが鉛筆なら平気で失敬する」「頼まれごとならがんばるが安い報酬ではやる気が失せる」「同じプラセボ薬でも高額なほうが効く」ー。人間は、どこまでも滑稽で「不合理」。でも、そんな人間の行動を「予想」することができれば、長続きしなかったダイエットに成功するかもしれないし、次なる大ヒット商品を生み出せるかもしれない!行動経済学ブームに火をつけたベストセラーの文庫版(裏表紙より)

この文章からも本全体からもそこはかとなく感じられる(もしかすると意図的な)陽キャ感は置いておいて、行動経済学という学問分野には以前から興味がありました。

人間は理論通りや合理的に行動するわけではなく、突然予想がつかないことをしたりする。
意思決定にはバイヤスがある。

今まで人間が「これが正しい」と理論的に考えていた事柄では説明がつかなくなり、新しい視点のものの見方が登場するという形の学問はすごく面白いなあと思っています。
量子力学などもそういう分野ではないかと思っているのですが、「人間が頑張って考えてきたことも、広い宇宙では実はすごく狭いこと」というのが好きで、予測なんか簡単にできないから生きていて楽しいし、絶えず勉強する必要があるんだよねって思えるから。
もちろん古典学問の礎があったからこそ出てきた分野だということも承知しています。
でも、もう一回学校へ行って講義聞くぞ、みたいな根性はないので、こうやって今日も本を読んでいます。

この本に書いてある行動実験は、そんな風になるのかと笑ってしまう結果ばかり。
でも、自分ならどうするかと考えると、やっぱり「予想どおりに不合理」に選んでしまうと思います。
理屈がわかっている時でさえも、不合理を選んでしまう。
そしてこの本のいいところは、不合理に生きてしまう私たちへ具体的な対策案を示している点です。

内容で面白かったのは、コカ・コーラとペプシのどちらが好きか実験。
コカ・コーラかペプシか知らされずに飲むとペプシが勝つ。
でも、ブランド名を聞いてから飲むとコカ・コーラに軍配が上がる。
この実験の限り、ブランディングの参考にすべきなのはコカ・コーラであることがわかります。

選択肢が二つ以上ある時、人間は選ばなかったもう一つの価値がないと思った選択肢にすら後ろ髪を引かれてしまうということが本には書いてありました。
完全に選ばなかった選択肢の扉を閉じなければいけない、と。
その例として、映画「風と共に去りぬ」のレットがスカーレットに最後に言った台詞「正直言って、俺には関係ない」は断固として扉が閉じられるから、人々の心に戒めとして残ると書いてありました。
私は読んでいて、ここが少し引っかかりまして。
私はあの時のレットはスカーレットのことはまだ愛していたと思っていて、積み重なった状況が一度決定的な別れを選択せざるを得なかっただけだと思っているから。
映画では、レット自身が扉を閉じられなかったように私には見えました。
こうやって人間の解釈は同じものを見ても違うのだから、これも不合理で面白いですよね。

あと、デューク大のバスケットボールチケット争奪戦の話は、「Mine!」にも書いてあったので、相当有名な話なんですね。
全然知らなかった。
著者はそのデューク大の教授です。

総じて愚かで可愛い存在、それが人間だということ。