RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる デイビッド・エプスタイン
読書時間 | 4時間56分(6日間) |
文章の難易度 | ★★☆(ふつう) |
内容の難易度 | ★★☆(ふつう) |
何かの専門家じゃない人におすすめ度 | ★★★ |
「専門性特化」というキャリアと知識の常識を塗り替える本。
今まで、知識もキャリアもいかに専門性を高めるか、それはいかに早く始めて深い知識や技術を身につけるか、ということを重要視していたけれども、それは全く違った!
知識で大切なのは専門性ではなく「幅」だった。
結構読み応えがある本で、研究や統計結果、具体例を用いて解説しているが、一貫して書いてあることはこれ。
(任天堂の話も出てくる。花札から始まった会社ということは存じ上げなかった)
これ皆さん薄々気が付いていたのではないですか?
学生時代、本当に頭の良い同級生って、勉強だけじゃなく、運動部でも活躍して、何ならバンドとかも組んでギターも弾いていた。
ガリ勉タイプより成績も良かったし、本質的に頭も良かった。
その時は、勉強は一生懸命やって頭が良くなるんじゃすでにだめで、もう産まれもった頭の出来が全てなのでは…? と思っていました。
が、そうでもなく、その何でも出来ること(すること)自体がお互いに相乗効果を発揮していた、ということをこの本は教えてくれました。
そして「『考え方』の方が、事前に細かな知識を持つことよりも重要」ということ。
どういう知識を持っているかということよりも、その知識を使ってどうやって答えを導き出すために考えられるか、ということの方が大切で、そのためには専門以外の学習が役に立つそうです。
考え方において重要なことの一つにクリエイティブに考えられるかがあり、「クリエイティブな成果を上げる人は、『狭いテーマにひたすらにフォーカスするのではなく』幅広い興味を持っている」そうで、「『この幅の広さが、専門領域の知識からは得られない洞察を生み出す』」とこの本には書いてありました。
一点注意したいことがあります。
社会人は、経験が何となく勉強になっている気になってしまいますが、経験すれば良いのではなく「学習」することが必要ということです。
また「永続的な知識を得るためには、ゆっくりと学習することが最善」で、「最も効果的な学習は非効率に見え、後れを取っているように見える」そう。
回り道しても良い、というのは「もしかしたら今一生懸命やっていることは無駄なのではないか」と不安になってしまう瞬間に勇気をくれます。
昨今効率重視化が進み、軽視され始めた「回り道や面倒臭いと思っていた事柄から湧き起こる、予期しない面白かったり嬉しかったりする出来事に出会うこと」という人間らしい化学反応の大切さを忘れてはいけないと、私は思っています。
これこそこの本にも書かれている「幅」を持たせるために必要なことではないでしょうか。
私のような会社員であれば予期せぬ異動もあるし、やむを得ず自分の望まない仕事や勉強をせざるを得ないこともあるでしょう。これが自分の一本通ったキャリアだと堂々と言えないことがもどかしく感じるかもしれない。
自分の専門性を考えた時、これだと即答できる人の方が少ないのではないかとも思います。
でもそれは多くの人が実は通っている道で、長期的に見ればその方が良いという答えが出ているのだから、安心して目の前のことに一生懸命取り組んで正解なのです。
他人と比べてがっかりしなくて良い。
私の読書も、ジャンルは関係なく、時に思い付きで読みたい本を読んでいくようなスタイルなので、それが肯定されたような気分になりました。