Mine!私たちを支配する「所有」のルール マイケル ヘラー&ジェームズ ザルツマン
読書時間 | 7時間15分(11日間) |
文章の難易度 | ★★☆(ふつう) |
内容の難易度 | ★★★(難しい) |
お前のものは俺のもの、俺のものは俺のものという人におすすめ度 | ★★★ |
「40歳過ぎたら物欲は途端になくなる」
先人に教えてもらったことが、とんでもない嘘だった。
私は40を過ぎた今でも欲しいバッグも靴もスニーカーも全然減らない。
これはどうしたことか。私がおかしいのか。いやそんなことは。
そんな時に書店で見たのがこの本だった。
しかし、読んでみると所有欲ではなく「所有権」の話だということがわかった。
よく見れば表紙にちゃんと「How the Hidden Rules of Ownership Control Our Lives」というサブタイトルが書いてあった。
意図しないことだったが、内容が面白そうだったので読んでみることにした。
この本は、所有権はどのようなものか、どのように発生するのか、過去どこからきて現在どのように私たちの生活に影響を与えているのか、ということと、その所有権のルールによって私たちの生活と行動、そしてビジネスに至るまでがどのように「支配」されているのかが書いてある。
所有権について多くの人が持っている知識は大概間違っている。
所有しているということは、自分のものか、自分のものでないか、どちらかだと考える。
しかし、そう簡単ではないのが「所有権」だ。
所有の原則は、下記6点。
- 早い者勝ち
- 占有
- 労働の報い
- 付属
- 自分の身体
- 家族(の持ち物)
具体的な内容はぜひ本を読んでいただきたいが、これだけ聞いてもなんとなく想像できると思う。
そして、これらは原則ではあるが、全てがこの法則に従うものではないということもこの本に書いてある。
この本の面白いところは、とても具体的な例がたくさん書いてあること。
権利と言えばみんなが思い出すディズニー著作権のこと、飛行機のリクライニングはどこまでが自分の席なのか問題、高級ブランドのそっくりさんがファストファッションで許されるのはなぜ、伯爵の相続制度などなど。
所有権の設計は強いものに優しく、弱いものに厳しく作られていることもある。
そして所有権というと、自分が持っている権利、つまり自分に有利にする権利を想像するが、実際権利が横行することで、多くの人が享受できるはずの豊かさが制限されてしまうことにも触れている。
「大勢の人が一つのモノの断片を所有していると、協力は成り立たず、富は失われ、結果的に誰もが損をする。」
これをグリットロックという。
日本でも、古畑任三郎の「間違われた男」回が再放送されないのはこれに当たると私は思っている。
が、つい最近再放送されていた。
気になる方はGoogle先生に詳細を聞いてみていただきたい。
この本はアメリカの法律を基に書かれているので、日本でそのまま通用する内容ばかりではないようだが、所有権という制度が人間を支配しているという根本的な考え方は十分わかる内容だ。
しかし、読むのに時間はかかった。
私に前提の知識がほとんどなかったからだ。
人間が何かを「それは自分のものだ!」と言う時、とても単純な主張のように見える。
しかし、その背景にはせめぎ合うストーリーがあり、どのストーリーが勝ち残るのかはわからない。
せめて所有権の原則と具体例を知ることで、複雑なカラクリを見ようとする力をこの本は教えてくれる。