魔女の後悔

魔女の後悔 大沢 在昌

読書時間6時間11分(6日間)
文章の難易度★★☆(ふつう)
内容の難易度★★☆(ふつう)
希望のある未来は捨てたと思ったことがある人におすすめ度★★★

女性が主人公のハードボイルド小説だ。
珍しい。

このご時世、こんなことを書いたら怒られるかもしれないが、私はハードボイルドと聞くと、強面のいかついおじさん達の激しい抗争を思い描く。
しかし女性のハードボイルドも、また良いものだぞということをこの本は教えてくれる。

売春島に娼婦として売られた過去を持ち、男の性質を一瞬で見抜く能力を活かして、闇のコンサルタントとして裏社会を生きる女・水原。
ある日、13歳の少女・由乃を京都まで連れてきてほしいと依頼される。
ボディーガードとして同行する途中、謎の人物に襲われかける。
由乃の父は韓国政財界を震想させた巨額詐欺事件の主犯であり、行方不明とされる遺産の存在によって狙われる理由があることがわかる。
そして、水原と由乃を結ぶ過去の出来事も判明する。

人気の「魔女シリーズ」最新作だそう。
私はこのシリーズを初めて読んだが、過去作を読んでいなくても、登場人物やその事情が理解できるように書かれているので問題なかった。

500ページを超える大作なので、読み始める前はどんな苦しい道のりかと思ったが、内容も面白くテンポも良いので、それなりに時間はかかるがストレスなく読める。

13歳の由乃に水原はじめ、登場人物たちはメロメロになる。
私は読んでいてもそれが全然ピンとこず、私の母性の薄さの問題かと思ったが、かなり早い時点で山乃は水原の子どもなのではないか、という伏線が出てくるので「ははあ、そういうことか」と納得がいく。
こういうところも著者の組み立ての上手さを感じる。

ちなみに東野圭吾が書いたとしたら、結局由乃は水原の子どもじゃないし、松本清張が書いたとしたら、間違いなく水原の子どもなのだが、大沢在昌の手にかかるとどうなるのかはぜひ皆様読んでいただきたい。

全体的に登場人物や状況設定が重く、ともすれば暗い物語になるところ、軽快さもありつつ、ハードボイルドにきめている。
登場人物も、良い意味で小説らしく魅力的だ。

味方になってくれる男たちが皆、水原に従順なのだが、いざと言う時はさっさと自分の赴くまま行動しそうな感じを残しているのも私は好きだった。
裏切らない安心感があるのは元男性の星川だけだ。

人間の性や業の本質にも深く切り込んでいて、良い意味で重厚さが増している。
これから何が起こるのか、希望があるのか、幸せになれるのかはわからないが、すごく良い形で話が終わる。
水原が捨てたはずの未来が、由乃という存在によって可視化されていく物話だった。