移動する人はうまくいく 長倉 顕太
読書時間 | 50分(3日間) |
文章の難易度 | ★☆☆(読みやすい) |
内容の難易度 | ★★☆(ふつう) |
今日もまた怠けてしまった人におすすめ度 | ★★★ |
人間変わりたかったら移動しろ、というのがこの本の言いたいことである。
少し補足すると、人間は「環境→感情→行動」という順番で変わるため、「環境からすべては生み出される」。
では環境を変えるためには何をするべきなのか、それは移動することである。
確かに優秀だと思う人の移動距離は多い気がする。
国内外問わず移動していて、それでもエネルギッシュであり、羨ましいと同時に同じ人類なのだろうかとも思ってしまったりする。
だから、私はこの本を読んでみようと思った。
人間にとって、意思の力のみで変われることというのは実は多くない。
多くの人は変わりたいと思った時、感情(モチベーション)だけで行動を変えようとするが、結局は環境の力で元の状態に引き戻されてしまう。
だから続かない。
逆に環境によって意思が決められることがほとんどだと私も思う。
例えば、貧乏になるような選択をするから困窮するのではなく、貧困である環境がより貧乏になる選択をさせるのだ、と思っている。
つまり人間の意思よりも、環境による影響の方がよっぽど大事だということだ。
この本では、環境を変えるという意味の「移動」だけではなく、「移動中」の重要さについても触れられている。
移動中にクリエティブな発想が生まれやすいことは皆、体感としてあるのではないだろうか。
この本では、人間の不幸の根幹は定住を始めたことであり、確かに文明は発達したかもしれないが、疫病もあるし、悪しきヒエラルキーはできたし、脳みそは小さくなったし、とにかく良いことなんてない、と読者を洗脳しようとする。
なぜかこの本は全体的にイケイケな尖った雰囲気をまとっており、普通のことを論じている文章でさえ主張が激しい感じがするのである。
安定を捨て、サバイバルの中生きてこうとする行動は人の思考をこのように変えるのだろうか。
大人になると、相手の言っていることの方が圧倒的に正しかったり、決して嫌っているわけではない相手にも、こうやって相容れない何かを感じることがある。
ちなみに、私は定住によって私たちが得た一番大切なものは、文明よりも人間らしい思考の文化だと思っている。
著者は、自分は普通の会社員であったが、安定を捨て、猛烈に移動したから今のような自分があるのだ、というようなことを本で言っている。
「だから、あなたもできるのだ」と読者を鼓舞するのに使う優しさと言ってしまえばそれまでだが、普通の会社員は安定を捨てられないし、拠点や家を複数持てないし、自分の才能を自分で開花できないし、本も出せないので、なかなか判断が難しいところだ。
人間が変わるためには意志の力よりも環境が大事なので、環境を変える移動を続けるべきであるというこの本の結論としては至極同意ができ、変わりたいと思っている人に一石を投じる内容ではあるのだが、それ以外に書いてあることは全体を通して何となくぼんやりした本である。
このくらいの内容でないと、読者は読んだことで満足してしまい、結局行動しないからかもしれない。
ただ、この本で一つだけ、100%同意できる部分があった。
それは「これからは、教養があるかどうかで人生の豊かさが決まる。」という文である。
この本では、教養とは「一つの物事を自分なりに楽しむこと」だと言っている。
著者が伝えたいのは「役に立たなそうなものをどんどんやっていくことの大切さだ。」そうだ。
現代社会で一見役に立ちそうもないことからも学べることはあり、結果そのような学びの方が人生は豊かになっていくのではないか、という意見は私もすごく同意できる。
合理性や効率、役に立つ、立たないで物事を判断するよりも、自分が楽しいか、楽しくないか。好きか、好きじゃないか。で判断できる方が幸せな気する。
私はそれが究極の人間らしい思考の文化ではないかと思っているのだ。