生成AI時代の「超」仕事術大全

生成AI時代の「超」仕事術大全 保科学世、アクセンチュアAIセンター

読書時間3時間57分(7日間)
文章の難易度★★☆(ふつう)
内容の難易度★★☆(ふつう)
ざっくり生成AIについて知りたい人におすすめ度★★★

一昨年、生成AIがすごく話題になった。
ChatGBT- 4が発表されたのがきっかけだったと記憶している。
以前からロボットや AI の台頭については言われていたことだが、ビジネス活用という点で、より具体的に使えるツールになってきたということだと思う。
日本はデジタル後進国と言われ、AIに関しても遅れている感は否めない。

私は一会社員なのだが、社内外どこの会社もどこの部署も人手不足だと聞く。
私は人手というより人材不足の方が深刻だと思うのだが、とにかく人数がもっといればどうにかなることが多いらしい。
この人材および人手不足は、何も私の会社だけではなく、出生率が下がっている日本全体の問題と言えることなので、これから先、良くなることは難しい。
そのため人手の確保より、いかに身の回りの使えるツールを上手く取り入れ作業効率を上げるか、またそのツールをどうしたら人間の補完にできるかということを考えるべきだと私は思っていた。
そこに生成AIの流行とは、渡りに船だとウキウキした。

しかし、Chat GBT- 4の発表から2年近く経ったが、社内で「AI使いたい、AI」などと言っているのは私だけである。
いくら正しいことを言っていても、組織の中で少数派となってしまうと、ともすれば「変な人」だから悲しい。

だが、こうやって私は自分のサイトも持っているのだし、デジタルやAIの勉強はしていて損はない。
何より、面白そうだから知りたい。
というわけで、この本を読んでみた。

この本は生成AIとは何か、何をもたらすのか、どんな活用ができるのか、導入するにあたって何に気を付けなければならないか、リスクについて、どのような発展性が未来にあるのかが書かれている。


生成AIに興味があり、とにかくざっくり概要だけも知りたいという時にぴったりの一冊だ。
簡単にわかりやすく、読んでいて「ああなるほどな」と思うところが多い。
消費電力や二酸化炭素排出量などの環境問題にまで触れているため、重要なところをある程度網羅した内容だと言える。
簡単に理解できる本だが、生成AIの知識をこれから発展させるための入門書としても使えるだろう。
また生成AIが及ぼす影響については、業界別に書かれているので、自分の業界にどのようなインパクトがあるかを具体的に知ることもできる。

そして、日本で生成AIがなかなか浸透しないだろう理由も、この本を読むと垣間見れてしまう。
生成AIの活用とは、「昨日入社した、完璧ではないが、ものすごい能力を秘めた、社会人経験3年目の人材」と一緒に仕事をする感覚に似ている。
能力が高いのはわかっているが、得意分野と苦手分野がはっきりしており、こちらが上手く動いてもらえるように指示できれば天国だが、社内の情勢などは理解していないので、上手く使えないと猫に小判状態、ということになる。

私はこの生成AIの性質が日本企業に浸透しない足かせになっているのだと思った。


現在の日本企業の出世している人に多いのが、「上司の言うことに従順で、逆らわない人」である。
もちろん優秀で仕事が出来る人も多い。
が、「経営層に逆らわず、間違いを起こさない安心できる人物」ということもかなり重要視されている。
このような人ばかりを出世させた企業では、上司が「優秀な部下を使う能力」が欠落する。
優秀な部下はどんな能力をどの程度持っているか把握して、自分の思い通りに動いてもらう能力だ。
どんどん仕事をして結果を出すバイタリティの人は、上司にとっては、優秀だが上司の言うことを無視し、反乱すら起こせる能力も持ち合わせていることになる。

素晴らしい結果よりも、自分の地位の保持の方が大事な人が多いのは当たり前と言えば当たり前かもしれない。

そして、とりあえず使ってみる、そして試行錯誤してみる、それでもダメなら辞めればいい、という精神も欠如している。
何かをして失敗したり、結果が出なかったりすることを極端に嫌う。
プラスよりマイナスの方を気にするのが日本企業の十八番である。
失敗したり、結果が出なかったりした過去の上に、成功が積み重ねられるのに、なんとも貧相な思想だ。

つまり、今までの日本企業は優秀な人を育て上手く使うことより、Noと言わない失敗しない人材を育てることに重きを置いていたのである。
それではAIを使うのは難しい。

AIは失敗もする。
その失敗を未然に防ぐように考えなければならないし、AIが間違った場合は、責任は自分が取らなければならない。
それができる器の大きい人材がいる企業でない限り、生成 AIの浸透は難しいのではないかというのが、この本を読んで考えた私の結論である。

AIが得意なことと、人が得意として出来ることは異なる。
AIは人の仕事を奪うのではない。
生成AIは仕事の質を上げる可能性が高い。
使いこなせていないと世界的なビジネスの土俵にも上がれなくなるだろう。
これによって、また格差が生まれていく。
私はAIを使って、仕事で楽をしたいだけなのに、なんともうまくいかない話だ。