毎日が夏休み 大島弓子
読書時間 | 13分(1日) |
文章の難易度 | ★☆☆(わかりやすい) |
内容の難易度 | ★★☆(ふつう) |
夏休みが懐かしいすべての大人におすすめ度 | ★★★ |
毎年、夏になると必ず読んでいる物語があります。
それが「毎日が夏休み」(「つるばらつるばら」に収録)。
家族とはどういうものか、働くとはどういうことか、勉強とは何か、自分の居場所はどう見つけるか、人生で本当に大切なことは何なのか。
それを考える機会をくれる漫画です。
名門女子中学に通う13歳のスギナは、家族に内緒で登校拒否をしていました。
いじめのスケープゴートを助けたら、自分がいじめのスケープゴートになってしまい、学校での居場所がなくなってしまったからです。
家を出て学校に行かず公園で過ごしていると、義父(スギナの実母の再婚相手)に遭遇します。
義父も、会社と方針が合わず退職していたことを、家族に言えずにいたのでした。
義父はスギナと一緒に就職できる会社を探しますが、当然ながらそんな会社は見つかりません。
そこで、義父はスギナと一緒に「なんでも屋」を起業することを決意します。
一緒に仕事をすることで、義父もスギナも成長していきますが…。
初めてこの漫画を読んだとき、私はスギナと同じ13歳でした。
当時の私は気が付かなかったけれど、主人公と同じ年齢でその物語を読めるのは、実はすごく貴重なことです。
主人公と同じ年齢で初めて見る物語の景色は、その時だけしかわからないシンクロするような瑞々しい感情を呼び起こしてくれます。
もちろんこの物語は突拍子もない部分もあり、良い意味で漫画らしいのですが、それでも人生の真理がきちんと描かれていて、今でも私の人生に大きく影響を与えています。
スギナの「夏の陽ざしにできる影って濃くて深いよね。人生も濃くて深い影があれば、その裏にはかがやくまぶしい光がぜったいある!ぜったいにあるんだよ、お義父さん」という台詞は、初めて読んでから四半世紀以上経った今も、私にとっては全然色あせない言葉です。
むしろ、その年齢ごとに言葉の響きが微妙に変わり、それがまた面白いと思っています。
私は昨年から今年にかけて、心身とも辛いことがありました。
今でも完全に治っていませんし、これから先どのくらいこの不調が続くのかもわかりません。
そんな状況で読んだこの物語は、昨年までとはまったく違って見えました。
でも、毎年と変わらず、希望があってすごく良かった。
本を読むというのは、その本の内容を知るためだけに意味があるのではありません。
読んだ時の自分の気持ちが鏡のように見えることがあります。
その時の自分の気持ちや置かれている状況で、同じ物語でも違うところが気になって、哀しかったり笑ってしまったりします。
それも本を読む面白さだと思っているので、私はこの物語を毎年夏に読み続けています。