日本のいいもの おいしいもの THE WONDERFUL & DELICIOUS IN JAPAN KAILENE FALLS
読書時間 | 33分(2日間) |
文章の難易度 | ★☆☆(読みやすい) |
内容の難易度 | ★☆☆(わかりやすい) |
見て楽しむ読書がしたい人におすすめ度 | ★★★ |
食という文化は生きている。
伝統的に受け継がれてきているものだけではなく、現在進行形で育っている食文化というものも存在する。
日本人が思い描く日本らしい食べ物というと、寿司、天ぷら、甘味で言えば、あんみつ、練り切りなどをまず思い浮かべる。
この本にはそういったものだけではなく「そう言えば、これは日本特有かもしれない」と気が付く食べ物がたくさん紹介されている。
私たちにとっては特段珍しいと感じない吉野家、コンビニのフライドチキンだ。
でもこの生活に溶け込んでいる食品こそ現在の生き生きとした食文化と言える。
それに気づく機会をくれる本だった。
そして、日本人の私も知らなかった知識も載っている。
例えば、「『とんかつ』は牛肉を炒め焼きしたフランスの料理の『コートレット・ド・ヴォー』がベース。牛肉は日本で手に入れやすかった豚肉に変えたり、パンくずをパン粉に変えたりして誕生しました。ちなみに、キャベツと一緒に食べるのは、キャベツに含まれるビタミンが、とんかつの脂っこさを消化しやすくしてくれるからのようです。」など。
筆者による水彩画で描かれたイラストもとても魅力的で、いつも見慣れた食べ物がとても愛らしく感じる。
また、日本語と英語の両方の説明表記があり、英語も簡潔かつわかりやすい表現のため、日本語・英語両方で読むこともチャレンジしやすい。
さて、この本を読んで改めて考えたのは日本の「喫茶店」という存在である。
これを英訳すると、cafeもしくはcoffee shopになるそうだが、それでは表現しきれていないことはなんとなくわかると思う。
あの独特の空間と、ノスタルジックな雰囲気とメニューこそ、日本らしい文化なのだろう。
伝統的な食文化の美しさと、今生き生きと育っている食文化の勢いと、どこか恋しく思う食文化の懐かしさのバランスがとても良い本だった。
見慣れた景色を、誰が他の人の目を通して見ることで別の輝きを感じる現象がある。
それがまさにこの本だと思う。
人間は自分が慣れ親しんだものの価値を忘れてしまうことある。
それを新鮮に感じる人の目を通して、私たちも教えてもらうのだ。
眺めるように見るだけでも楽しい本で、気軽にすぐ読める。
まず読書を始めてみたい人にもおすすめできる本だ。