就職しないで生きるには レイモンド・マンゴー
| 読書時間 | 2時間5分(3日間) |
| 文章の難易度 | ★★☆(ふつう) |
| 内容の難易度 | ★★☆(ふつう) |
| 会社という組織から脱出したい人におすすめ度 | ★★★ |
私はとにかく労働が嫌いである。
過去にも同じようなことを言った気がするが、また違う本の話なので、しばらくお付き合いいただきたい。
一日だらだら寝っ転がっていてお金が入ってくるのが一番の理想である。
そのような性質をもった私であるから、この本の題名を見て飛びついた。
しかし、この題名にはトラップがあって、「就職しない」というのは、企業や組織に属さないという意味であって、労働をしないこととは大きく違っていた。
よくよく考えれば当然なのだが、会社のことも特に好きではない私はとりあえず最後まで読んでみることにしたのである。
1981 年に初版されたこの本では、著者がコミューン生活をしたり、シアトルで小さな出版社兼書店を営む中で見聞きした、様々な「就職しない生き方」を紹介している。
最近てんで言うことが減った「私が生まれる前の話」だ。
だからか、どこか遠い国の遠い昔の話のように感じる。
当時のアメリカは、会社員は終身雇用が保障され、年金も安心してもらえる時代だったのではないだろうか。
その保障から敢えて抜け出し、自由を追い求め、人と人との関係性を重視し、自分の心のままに楽しく生きていく、というのがこの本の著者の生き方であるから、当時は衝撃的だっただろうし、同時に支持されたのだと思う。
この世には、「絶対にそうなれないけれど憧れる存在」というのがある。
破天荒だったり、意地悪な奴に毒を吐いてみたり、権力にたてついてみたり、そういう存在のことだ。
でも、著者の生き方は、なんとなくそういう部類ではない。
「自由と言うのは、さほど人間にとってプラスではない」と私は思っている。
自由というと、自分で何でも決められ、好きな人と好きな場所で好きな時間を過ごせるから、一瞬魅力的に聞こえる。
しかし裏を返せば、ありとあらゆることを自分で選ばなければならず、それはそれで面倒なのである。
私は先述の通り一生だらだら寝転がって生きていたいのだが、それは今私が会社員として毎日仕事をしているからそう思うだけで、実際そうなったら、それはそれでいつか飽きてくるかもしれない。
何より、ゴロゴロしているだけで心身の健康を保つというのも、年を取れば取るほど難しいことだろう。
人間、とにかく何をするにしても、普通に生き続けていくのは楽ではないのである。
だから、ある程度何をするかを決められている方が、時間を潰せるのではないかと思っている。
そしてこの本も、浮ついたアメリカンドリームを書いているのではなく「たとえそれがどんなに気ままなものに見えたとしても、スモールビジネスとはひたすら地味な作業のくり返しということだ」と、きちんと現実に目が向けられている。
この本が言いたいのは、「就職しないでいい生き方」ではない。
お金のために嘘にまみれた生き方をしないこと、本当に人々が必要としているものを自分の手で生み出すこと、失敗したと思ってもへこたれないことの大切さだ。
人間的なつながりや、自分にとっての喜び、本質的な豊かさを追求することの価値が書かれている。
言いたいことは人間として普遍的な真理であるが、私は、読んでいて「そこまでしなくても」的に感じたのだ。
しかし、そう感じるのが幸せなことだともわかっている。
ひと昔前は、組織に属さない生活というのは、この本の著者のように荒波に船をこぎだすような、ともすればエキセントリックな生活しか選択肢がなかったのかもしれない。
今は、副業してもいいし、リモートワークもあるし、ライフワークバランスも叫ばれるようになり、仕事をする上での生き方の選択肢も増えた。
この本が昔話に感じられるのは、私たちが恩恵を受けている証拠なのである。
