女子とお金のリアル

女子とお金のリアル 小田桐あさぎ

読書時間1時間4分(2日間)
文章の難易度★☆☆(読みやすい)
内容の難易度★☆☆(わかりやすい)
いつもお金がないと思っている女性におすすめ度★★★

日本はお金の話をしないことを美徳としている。
しかし、その美徳がある種の進歩を遅らせてきたと思う。

この本は「どうしたらお金のある人生になれるのか」という疑問に年商4億、家族でドバイ在中の著者が答えている。
普通の会社員の私からすると著者に同意できることばかりではないけれど(収入格差があるのだからそれは当たり前)、この本は日本人のお金に対しての考え方の闇を浮き彫りにしている。

日本人は長らく節約を善としていて、特に女性は「無意識の我慢」を強いられているということ。
令和の時代もそれは変わらなくて、女性の発想は「何かを切り詰めることでお金を確保する」という下地が作られてしまっている。
お金に関する考え方が家計簿をつける感覚から抜け出せない。
だから、過去の自分自身に感じているのは、発想が明らかにケチだったということだ。

私は30代の頃、損益計算書と決算書を読まなければいけない仕事をすることになったので、必要に駆られる形で勉強したのだが「投資」を意識したのはそこからだ。
お金の使い道は「浪費」「消費」「投資」の3種類だが、私は30歳過ぎても恥ずかしながら投資の概念がものすごく薄かった。
投資のようなお金の使い方もしたことはあったが「これは投資だ」と自覚して使っていたわけではない。
それでは経営に関わる時に、ものすごく不利なのだ。

困ったことにお金の使い方というのは、時間の使い方にも通じる。
だから日本人は「時短」「タイパ」という言葉が好きになる。
でも、その節約した時間で何をしているかというと、充実した時間を過ごすというよりも、その節約した時間の中でもまた時間に追われてしまうという結果を生み出すことになる。
(そもそも「自分の持っている資本」に対しての意識が薄いと思う。)
この本は、お金は使ったら減るものではなく、払った以上の価値を感じられる何かに変換するために存在するということを改めて教えてくれる。

話は変わるが、今の会社(小売業)に入って私が一番初めに気に入ったところは、店頭に出ている全ての商品に値札が付いているところ。
どんな魅力的な商品も値段を含めてその商品の価値だと思っているから、売る立場で値段表記がないのは後出しジャンケンのようで私は好きではない。


しかし、社会人になってしばらく経つと様々な機会で「値段を聞くのは失礼」という概念にぶち当たった。
私にとってはかなりの謎概念だ。
もちろん時と場合によって失礼になることは私も理解している。
しかし、「値段を聞く行為そのものが失礼」ということは絶対にないと思っている。
自分が感じる商品の価値と価格が釣り合わなければ、買わない。
ごくごく自然なことなのになぜ失礼になってしまうのか。
値段を聞かれて失礼なものには、もとから値段をつけないという選択肢だってあるはずなのに。
私に言わせればこれもお金の話をしたがらない日本人の美徳の弊害である。

この弊害を少しでもなくすため、お金に対する発想を変えること、これが今、お金を考える上で必要なことだ。
あると思ったらある、ないと思った瞬間にないものになるのもまたお金だから。