天才の光と影 ノーベル賞受賞者23人の狂気

天才の光と影 ノーベル賞受賞者23人の狂気 高橋 昌一郎

読書時間4時間58分(7日間)
文章の難易度★★☆(ふつう)
内容の難易度★★☆(ふつう)
天才の人生を知りたい人におすすめ度★★★

天才になぞなるものではない。

高校生の頃、受験勉強をしていると、いかに自分が凡人なのかがわかった。
そこからだろうか、天才に憧れ続けていた。
非凡な才能があり、それで名声を得ること。
見える景色が私とは違うのだろう、天才には果たしてどんな景色が見えているのか。

しかし社会人生活に追われていると、天才とか凡人とかそんなことも意識しなくなる。
日常生活は凡人たちで構成されているからだろうか。
それとも会社の行き帰りで心底疲れるからだろうか。
そんな時に、本屋で目にしたのがこの本だった。

大人になるにつれ、普通の人とは違うから天才が天才としていられるゆえんなのだと実感としてわかるようになる。
普通の感覚を持って、人間の器も大きく、才能だけ有り余っていることなどほぼありえない。

天才は良くも悪くも飛びぬけた存在なのだ。
この本は23人のノーベル賞受賞者の人生の、文字通り「光と影」をそれぞれ簡潔に記した本だ。
このご時世、23人のうち女性が一人もいないのは何か理由があるのだろうか。まあいい。
ノーベル賞受賞者ということなので、おそらくみんな超絶頭が良いのだと思う。
実に陳腐な表現だが、私にはこの表現が限界である。
凡人には、ある一定を超えてしまった頭の良さの優劣はもうわからない。
この本はかなりわかりやすく彼らが提唱した理論を解説してくれているのだが、私は読んでも良くわからないことが多かった。
理系の誰かに解説してほしい、と言ってここはお茶を濁そう。

さて、この本を読むと、同じ天才達でも生まれ育った環境や才能が開花した時期などは特に共通項はないように思える。
しかし、「幼少期の家族や周囲の人々との関わり方が、人格形成に多大に影響する」ということは天才であろうとなかろうと同じ、ということがわかる。
家族との関係がこじれていると必要以上の嫉妬や執着など歪みが見えるし、温かい両親に見守られていると快活だったり温和だったり理想主義者的になる傾向があると思った。

ただノーベル賞受賞者が、後年、奇妙なことや科学的に不合理な説を抱く妄信的な「ノーベル病」に関しては、この本を読む限り、人格云々も関係なく、どうして引き起こされるのか因果関係はわからない。
しかし、本当にこれが病なのか、100年後実は正しかったと言う結果が出てしまうかも知れない可能性は、ノーベル賞受賞者の彼らが言う限り拭えない気がしてしまう。

普通の幸せというものが実はすごくハードルが高いというが、それは凡人への慰めではない。
才能を持っていても、大衆から飛び抜けた途端、生きにくくなることがあるからだ。
それがわからないと、光だけを見て無駄に憧れてしまう。

天才であろうとなかろうと、今の自分を自分で幸せに出来ることがどんな人生でも一番大切なのだから。