呪いを、科学する

呪いを、科学する 中川 朝子

読書時間1時間33分(4日間)
文章の難易度★★☆(ふつう)
内容の難易度★★☆(ふつう)
呪いの正体を知りたい人へおすすめ度★★★

皆さんは、不能犯という言葉をご存じだろうか。
ある罪を犯そうとする意思で行為をなしたが、その行為の性質上、犯罪の結果を生む可能性がなく、未遂犯にもあたらないとされる行為。呪術(じゅじゅつ)によって人を殺そうとすることなど。(出典:デジタル大辞泉)。
つまり、こちらが相手を殺してやろうとどれだけ呪ったところで、例え相手が死んでしまったとしても、呪うという行為だけでは死なせるという結果の発生は不可能だと考えられ、罪に問うことはできないことを指す。

皆さんも40年ほど生きていたら、できれば地獄に落ちてほしいと思う人間の一人や二人いるだろう。
呪うだけでそれが現実となったら、こんなスッキリすることはない。
ちなみに、「誰かに傷つけられるようなことをされても、忘れることが一番良い、自分もそうやって許されてきたのだから」という大人の意見もある。
しかし、忘れられるような傷つけられ方しかされていない人は、自分がいかに幸せな環境で生まれ育って生きているかを再確認したほうが良い。
世の中には、傷ついたことで人生が変わってしまい、一生辛い環境で生きていく他ない人も存在する。

さて話は戻るが、呪いで誰かに鉄槌を下すにはどうしたらよいのだろうか。
バタフライエフェクトよろしく、仕組みを科学で解明してほしいものである。
というわけで、この本を読んでみた。

この本は呪いの正体を科学的に解説するという趣旨で書かれている。
何が理由かわからない奇妙だったり恐ろしかったりする現象をとりあえずカテゴライズする分野として存在した呪いの話である。
つまり、とりあえず祟りや呪い、もしくは都市伝説だと思われていたことの正体を解説している本だ。

私が知りたかったのは、呪いの正体ではなく、メカニズムだった。
「呪ってやる」と思っただけで、結果、天罰が下ったような現象を引き起こした原因はこれだった、という不能犯が可能になる仕組みが知りたかったのである。
ドラマのトリックのような説明が欲しかったと言ってもいい。
意思が意図から離れて起こるような「呪いのメカニズム」を知りたかった。
しかし、それはあまりこの本には書いてなかった。
残念ではあるが、願うだけで簡単に物事が叶うという都合良いものなどこの世にはそうそう存在しないのだ。

この本で頼りになった(?)情報と言えば、「不安や恐怖などの『感情』が、実際に体調に影響を及ぼす」、つまり「心理的異常状態は、場合によっては命にかかわる」ということと、VRのギロチンを経験した人が「体調を悪化させる身体症状を感じた」ということだ。

呪いをかけられたから死ぬかもしれないと心配することは、人間にとって予想以上にダメージになることと、疑似体験でも恐怖や脅迫などストレスを感じるものは、呪いのように降ってくる可能性があるということだ。
映画にもなった「リング」はものすごい理にかなっていたのだ。

当時の人間が解明できない事象をとりあえず呪いだと分類したものに関しては、この本を読んでわかる通り、現代の研究や科学技術で多くのことが解明されている。
大きく分けてしまうと呪いと思われていたものの正体は勘違いか病かである。
しかしながら、そんな現代にも呪いという概念の浸透率はまだまだ高いと私は思う。

今ですら、呪われることはできれば避けて通りたいところであり、根強くその念力のようなものに対する恐怖は我々の生活に根付いている。

それは、人間には未知の世界がまだあるということと、人の意思や思考から引き起こされる何かの力について、人間がなんとなく理解しているからではないかと思う。
誰かに確実に天罰を下す呪いというのも容易ではないのだ。