参謀の教科書

参謀の教科書 才能はいらない。あなたにもできる会社も上司も動かす仕事術 伊藤 俊幸

読書時間1時間40分(4日間)
文章の難易度★★☆(ふつう)
内容の難易度★★☆(ふつう)
上司の手綱を握りたいと思っている人におすすめ度★★★

この本は「部下の教科書」だ。
社会人になりたての人へ向けた本や、管理職およびリーダーになった人の指南書は平積みでよく目にするが、部下としてどうあるべきか、という本は今までなかった気がする。

部下としてどう仕事に取り組むのが正解か、ということが全編を通して書かれている。

組織は8割以上が部下というフォロワーで構成されている。
その部下の素質が、組織力を大きく変える。

上司との関係性とその構築方法、上司が仕事をしやすいように考えて仕事をすること、そして部下が上司をマネジメントすること、どのように業務判断を行うのが良いか、提案力、対人力、危機管理能力、組織の構成、また部下にもそのまた部下がいる場合があり、その教育方法、リーダーシップについてなど広く書かれている。

一貫した視点は「最強の部下になるにはどうしたらいいのか」ということ。
その最強の部下が「参謀」ということだ。
この参謀になることができた部下は、当然上司となっても活躍することができるだろう。

この本は、部下であろうと上司であろうと必要な社会人スキルとビジネススキルを広く学ぶことができる。
少し辛辣な言い方をすると、年功序列で役職はついているものの、ビジネススキルは低いという人も世の中には存在する。
そういう人が何をしたらいいかわからない場合、この本を読むことをお勧めできる。

しかし私はこの本を読んで、気をつけなければならない点があると思った。
参謀は、生かすも殺すも組織のポテンシャル次第だ。
優秀な部下を使える上司の元や、組織の透明性が高く健全である場合は、参謀は活躍できるし、自己成長も見込める。
当然、組織全体で成長するだろう。

しかし、そういう組織ばかりではない。
優秀な部下ばかりに仕事が押し付けられ、給料は高い上司は何もできないし、しないという腐った組織も残念ながら存在する。
そういう場合は、仕事ができる人だけが苦労する構図になっている。
優秀な参謀だけが苦労するということがあり得る。

さて、著者は海上自衛隊のご出身とのことで「失敗の本質ー日本軍の組織論的研究」の話が出てくる。
もちろん戦争は多くの人の人生に影を落とし、時間が解決しないこともあると理解はしているが、この話が冒頭に出てくるということは、自衛隊ではこの話が根強く教訓として受け継がれていることが想像できた。
この本で、物事の本質を見ることの重要性が語られているのも頷ける。