全員“カモ”

全員“カモ” 「ズルい人」がはびこるこの世界で、まっとうな思考を身につける方法 ダニエル・シモンズ

読書時間3時間7分(6日間)
文章の難易度★★☆(ふつう)
内容の難易度★★☆(ふつう)
絶対騙されない自信がある人へおすすめ度★★★

他人は用できないが、自分はもっと信用できないものである。
この世には詐欺や詐欺的行為が萬栄しており、明日は我が身。
私たちは意識的にも無意識的にも騙されていることが多いのだ。

この本は詐欺師が騙すために利用する人間の4つの認知的なハビット(癖や習慣のこと)、「集中」「予測」「思い込み」「効率」と、騙しのテクニックとして使われる4つの認知的なフック(釣り針のようなもの)である「一貫性」「親近性」「有効性」を、多くの事例とともに詳しく解説している。

これらは決して、騙される人間の愚かな習性ではない。
むしろ生きていく上で誰もが必要な認知やバイアスが影響している。
例えば、何かに「集中」していると、背景など他の変化に気づきにくいことは、皆さんも実体験でわかるだろう。
問題はこれが詐欺や詐欺的行為に悪用されていることなのだ。

この本を読んでわかるのは、「知識があれば、ある程度は騙されるのを防ぐことができる」ということだ。
既に前世紀の遺物感がある名前の「オレオレ詐欺」やネットを駆使して恋心と下心に漬け込む「ロマンス詐欺」、いつの世も果てないゾンビ「投資詐欺」等、敵もさるもの、手を変え品を変える。
しかし人間が騙される法則というのはある程度わかっており、新手の詐欺もその法則に基づいて行われる可能性が高い。
この本でも書いてある通り、「知は力なり」だ。

少しでもおかしいと感じたら、具体的にどのような思考や行動を取ったらいいかということも本に書かれているが、鉄壁のガードは難しい。

この本も「絶対に騙されない方法」を説いているのではなく、人間の騙されやすい傾向を知ることで、大惨事になるのは防げるはず、という内容なのだ。

よくよく考えれば、だいたいの詐欺師はプロであり、失敗したらお縄になるという文字通り綱渡りのハイリスクハイリターンで生きている人々である。
そんな緊張感と気合の入ったプロに、素人が勝てるわけがない。

この本を読んで、騙されにくい知識はついたが、そんなものがあったってなくたって、騙されるときは騙されるのだ、ということもわかった。
蛇に睨まれた蛙みたいなものだ。
一度カモだと思われたら逃げられない。
私は大丈夫と意味不明な自信がある人がいるが、謎すぎる。
まずはその考えを捨てることから始まる。

さて、最後に、この本で印象に残った文章を二つ引用したい。

一つ目
「記憶というのは、つくられる時期が早ければ早いほど忘れにくいということがわかっている。」そうだ。
これを読んでくださっている若い方、今すぐ何か印象に残る経験をすることをお勧めする。
旅や芸術作品に出会うこと、もちろん読書も良い。
一生素敵な記憶として刻まれるはずだ。
そしてこれを読んでくださっている若くない方、あなたの人生において、自分の意思で何かを変えることができる一番若い日は今日だ。
手垢がついた言葉で申し訳ないが、あきらめるにはまだ早い。

二つ日(本の推薦広告について)。
「筆者は推薦広告を全部無視してもかまわないと思っている」
「筆者が思うに、推薦文の頼性は、その作家が書いた推薦文の数に反比例する。」
つまり、読んだ本すべてを良し悪しわからず推薦しているか、読まずに推薦しているかのどちらかだそうだ。
これを言われてしまうと、読んだ本の感想をポストしている私の立場がない。
私は本を選ぶスキルに関してある程度自負があり、全部読んで「ハズレ」だった本というのはそうそうない。
が、そういう本も実は存在する。
読了したが、いまいちだった本の感想は、(できるだけポジティブに書くようにしているが)ネガティブな感想も正直に書いている。
読んでくださっている皆様にも、自分にも嘘はつかないようにしている。