人生後半の戦略書 アーサー・C・ブルックス
読書時間 | 2時間41分(8日間) |
文章の難易度 | ★★☆(ふつう) |
内容の難易度 | ★★☆(ふつう) |
人生折り返し地点を曲がったと思う人におすすめ度 | ★★★ |
みんななんとなく、今まで必死に目指してきた、富や名声、権力を得ることだけでは本当の幸せにはなれないのではないか、ということを感じ始めている。
そして40代になって猛烈に仕事をしていると、この生活は長く続けられない、いつか燃え尽き症候群になってしまうのではないかという恐怖に近い感覚をぼんやりでも持っている人の方が多いと思う。
ステレオタイプの「働かないおじさん」や「バブルを引きずるお局」は、確かに努力はしていないが、何もみんな好きでそうなっているわけではないのかもしれない。
しかし、じゃあどうしたら良いのか、ということは、明確な答えを見つけられていない。
それに答えを提示するのがこの本だ。
富や名声を得ることはもちろん素敵なことだが、これを得るための欲望は際限がない。
簡単に言うと、何か一つ得ても、「もっと、もっと」欲しくなってしまう。
それは精神的に健康でない気がする。
この人生100年時代、何かを爆速で続けるということは不可能に近い。
人間、若い内は心身とも無理が効くことが多いけれど、人生後半になると、そうもいかない。
なのに、人生はまだ半分残っているというジレンマを抱えることになる。
そして必要とされなくなる喪失感。
ここで舵を切ることが必要なのかもしれない。
人間には2種類の知能が備わっているそうだ。
一つは「流動性知能」で、推論力、柔軟な思考力、目新しい問題の解決力を指す。
この流動性知能は成人期初期にピークに達し、30代から40代に急速に低下することがわかっている。
そしてもう一つは「結晶性知能」で、過去に学んだ知識の蓄えを活用する能力と考えられ、人が生きる中で文化的適応と学習によって獲得した知識に相当するそうだ。
先の流動性知能は地頭の良さで、後者の結晶性知能は知恵と言える。
そして流動性知能がピークに達した後低下しても、結晶性知能は育っていくということに注目すべきだ。
知能の種類は変わるが、人生を通して知能を育てることはできるということになる。
人生後半は結晶性知能を育むことを意識すると良いということがわかる。
まず、今まで執着していた執着、喪失感への恐怖心をなくす努力をする。
そして、配偶者や友人との人間関係を深め、精神性の成長と、自分の弱さを自覚し、受け入れること。
これが人生後半の生きる上での戦略と言える。
まとめてしまうと簡単になってしまうが、努力が必要なことだ。
詳しくはぜひ本を読んでいただきたいが、新しい絆と年齢を重ねることで感じる弱さや喪失感を超えた強さを探す旅が人生後半の面白さと幸せなのではないかと考えた。
人生、何かを始めるのに遅すぎる時はない。
人は好機というものがあり、ほとんどの場合始めようと思った瞬間がベストタイミングだということだ。
ただ、同時に始めるのは何事も早い方が良い、というのもまた真理だと思う。
今日、この本を読むのを始めるのはどうだろう。
そしてこの本にはこうなってはいけない例というのも書かれている。
中年になると一時的な狂気に駆られることがあり、本質を見失って暴走する例。
残念ながら、何も対策をしないとこうなっていくという例である。
ということはほとんどの人が本質を見失い狂気に駆られ暴走する可能性が高いということになる。
こうならないために私たちは今から努力する必要がある。
努力すれば良い方変われるのだから。