マンガで読む 資本とイデオロギー クレール・アレ、バンジャマン・アダム、トマ・ピケティ(原作)
読書時間 | 2時間30分(5日間) |
文章の難易度 | ★★☆(ふつう) |
内容の難易度 | ★★★(難しい) |
千ページ越えの本は挫折する人におすすめ度 | ★★★ |
トマ・ピケティ「21世紀の資本」という本が10年ほど前にベストセラーになった。
厚くて文字が小さい本だった気がする。
明らかに読了できないだろう本については、私は最初から諦めることにしている。
おそらくこの本が言いたかったことは「資本主義は放っておくと格差は拡大するから、干渉が必要である」というようなことだったと思う。
まあ、読んでないから確かではない。
ひょんなことから、その著者トマ・ピケティの「資本とイデオロギー」という本が漫画になっていることを知った。
しかもイラストとカラーの印刷がおしゃれで素敵な本だったのだ。
しかし問題が発生する。
漫画化、というと内容が簡単になっているとか、わかりやすくなっていると勘違いしてしまう節がある。
しかし、もともとの本が難解だった場合、簡単になったりかみ砕いたりしたとしても、まだ難しいのだ。
ものすごく難しい内容が、まあまあ難しいくらいになるだけだったのだ。
トマ・ピケティが書いたもともとの著書がどういう構成になっているか知らないが、この本は1788年から始まり 2020年まで続いている、ある貴族一家の物語だ。
その一家が8代に渡る過程で所有していた資本がどうなっていくか、ということが主軸として書かれている。
この物語の中で、所有権、奴隷制度や植民地、資産、税制、階級制度、債務、政治などのイデオロギーに触れ、人々が不平等からの解放を願い、どう変わってきたのか。
不平等は解消されたのか。
そして、過去の倫理観を責められるのか。
ということを投げかける物語になっている。
物語仕立てにはなっているものの、国立大学受験を早々に諦め世界史をポイした私にはかなり難しい内容である。
物語の始めでは、土地を所有していた場合、そこで働く人的労働力も同時に資産であったことは一つのポイントだと言える。
富の配分や世襲財産の維持費問題などにも触れられており、単なる漫画におけるファンタジーではなく非常に現実的に仕上がっている。
漢字に一切ふりがなが振られていないことを見ると、児童用ではなく、少なくとも生徒・学生から大人が対象年齢だろうと思う。
歴史を鑑みて、私たちは今何ができるのか、どのようなことが選択肢として存在するのかを考えさせる実にまじめな本である。
が、56ページから 57ページだけ急に面白くなる。
財務大臣の元妻と、愛人から妻になった女性のドロドロしたすったもんだ、最終的には殺人劇にまで発展する語が描かれている。
下世話な話だが、スキャンダルはいつの世も人をワクワクさせる何かがある。
描かれた貴族一家はフランス人なのだが、フランスにとって「自分は世界の中心である」という思想が根強い印象だった。
アメリカやイギリスでさえも格下だと思っている感が見え隠れするのである。
ヨーロッパは長い年月をかけて手に入れた軍事的な優位性によって、世界において中心的であり、力を持っていた。
要は戦争がヨーロッパを強くしたと言っていいだろう。
しかしこの当時、具体的には1840年から 1850年、アメリカの初等教育が90%以上(ただし白人)の時、イギリス、フランス、ドイツは20~30%だったことが描かれている。
これは注目すべき事柄に感じた。
最初に書いた通り、イラストがとてもおしゃれで、見ているだけでも楽しい本だ。
情操教育のためには、子どもたちにこういう本を読んで欲しいのだが、いかんせん内容がむずかしい。
おしゃれなイラストだけに惹かれ読むとケガをするが、トマ・ピケティに興味はあるが一生著書は読まなかっただろう私のような人間のためには良い機会をくれる本だった。