サンタクロースっているんでしょうか?

サンタクロースっているんでしょうか?  中村 妙子 (翻訳)

読書時間5分(1日間)
文章の難易度★☆☆(読みやすい)
内容の難易度★★☆(ふつう)
サンタクロースの存在を信じたい人におすすめ度★★★

この世界に存在するものは、2種類に分けられます。

一つ目は、私たちが「あるか、ないか」「いるか、いないのか」と考えようと考えまいと、必ず存在したり存在しなかったりするものです。
例えば、リンゴは存在していますよね。
私たちがこの世にリンゴは存在しないと信じていたとしても、その思いとは関係なく存在しています。
(リンゴはそもそもリンゴとして存在しているのか、という哲学的な話はややこしくなるから今回は考えません)。

二つ目は、私たちが「ないと思った瞬間になくなるもの」という性質を持った存在です。
例えば、夢や希望などはこれに属すると私は思っています。
あると思っても必ずあるとは限らないけれど、ないと思った瞬間になくなってしまう。
存在を信じ続けた人だけに手に入る存在、と言っても良いと思います。

さて、皆さん、サンタクロースはどちらだと思いますか。
私は後者だと思っています。
いると思った人にだけ存在して、いないと思った瞬間いなくなるもの。
だから「サンタクロースがいるのかどうか」、私がそんな素敵な質問をされたら、この本をまず読んでみてほしいと答えるでしょう。

8歳の少女が、ニューヨークサン新聞社に「サンタクロースっているんでしょうか」という可愛らしい投書をしたことから始まります。
彼女の友人の何人かは「サンタクロースはいない」と言っていること、彼女の父親が新聞社に聞いてみたらどうかと勧めたことがきっかけでした。
その答えを社説欄に掲載したのがこの本の内容なのです。
もう120年以上前に書かれていますが、今でも色褪せないクリスマスの古典です。
幼い少女へサンタクロースを信じさせるという淡い夢を見させるような浅はかな内容ではありません。
だからこそ、いつの時代でも、どんな人が読んでも、心を打たれる文章になっているのだと思います。

しかしながら、はっきりと社説の中では「サンタクロースはいる」と答えています。
サンタクロースがいるかどうかの答えを通して、見えないものを安易にないと決めつけてしまうことの哀しさと、目に見えなくても確実に存在する輝かしい存在があること、それを信じることの大切さを伝えています。

夢や希望、愛情、優しさ、思いやり…。
「ないと思った瞬間になくなるもの」の存在は、儚いものです。
でも、私たちがその存在を信じられなくなった時、人生はとてもつまらないものになるのではないでしょうか。
それを毎年思い出させてくれるのが、この本の素晴らしさなのです。
クリスマスに、とても素敵な気分になれますよね。