わかったさんのスイートポテト 寺村輝夫 (企画・原案), 永井郁子 (著, イラスト)
読書時間 | 6分(1日間) |
文章の難易度 | ★☆☆(読みやすい) |
内容の難易度 | ★☆☆(わかりやすい) |
元少年少女の皆さんにおすすめ度 | ★★★ |
自分の読書偏差値は高いのかもしれないと自惚れ始めたのは最近のことだ。
しかしこれは自分の努力ではなく、父方の祖父の愛情と資本投入のお陰だと思っている。
本を好きになるには、自ら興味を持った本をひたすら読んで、それが楽しいとか好きだとか感じることから始まる。
惹かれた本を手に取り、すぐ読める環境が整っていると、その可能性が高くなる。
私が小学生だった頃、祖父は毎週土曜日に私を書店に連れて行き、値段も関係なく、好きな本をどんどん買ってくれた。
一応、私が買いたい本を祖父に見せてから買ってもらうのだが、この本はだめだと言われたことは一度もなかった。
なんと CLAMP の漫画を初めて買ってくれたのも祖父である。
さて、その祖父が買ってくれた本の中でも、私は児童書の「わかったさん」シリーズが大好きだった。
わかったさんの本は、お菓子のレシピを物語の中で教えてくれるシリーズだ。
クッキー、シュークリーム、ドーナツ、アップルパイ、ホットケーキ、プリン、アイスクリーム、ショートケーキ、クレープ、マドレーヌの全10巻で、すべて持っていた。
整理整頓が大嫌いな私が、きちんと発刊順に本棚に並べていた。
ちなみに、お料理の「こまったさん」シリーズというのもあったのだが、私は今も昔も変わらず「わかったさん」派閥である。
わかったさんは、クリーニング屋の娘さんで、ワゴンでクリーニング品の配達をしている。
車のエンジンをかけたり、道の角をまがったりすると、異世界に迷い込み、そこでファンタジーが展開する。
楽しいだけの夢物語ではなく、わくわくする中にピリッと刺激がある大人っぽい現実的な要素もあった。
児童書にありがちな道徳の押し付けみたいなものがなく、イラストも表現豊かでおしゃれで可愛かった。
デフォルトで終盤はいわゆる夢オチになるのだが、最後は「本当は夢じゃなかったのかも・・・?」と思わせてくれる余韻がある。
読んでいて本当に楽しかった。
今では考えられないと思うが、昔、子どもが将来なりたいものの中に、職業と同列でお嫁さんというカテゴリーが存在した。
「将来の夢はお嫁さん?」と大人に聞かれた時、「お嫁さんは職業じゃないだろ」と思っていた当時のかわいくない私は、家業の手伝いとは言え、わかったさんが自分の仕事を持っていたのも好きだった。
さて、そんな思い出があるこのわかったさんシリーズが、なんと30年ぶりに新刊が出たのだという。
それがこの「わかったさんのスイートポテト」だ。
公式SNSが「元少年少女のみなさん」と呼び掛けていたのが、感慨深かった。
祖父は亡くなっているが、私はお給料をもらっている会社員なので、ありがたいことに今度は自分で自分にこの本が買えた。
原作者の方は亡くなっているので、イラストの永井さんが今回はストーリーも絵もお描きになっている。
前シリーズとは本のサイズが少し変わった。
しかし、今回も前シリーズを踏襲するようなストーリー展開で、この本を読むことでスイートポテトのレシピがわかるようになっており、人知れず胸を熱くしている。
まさかシリーズ完結後30年経って新作を読むことができるなんて、想像もしていなかった。
人生はこれだから面白い。
本の帯には「新シリーズ」と表記されている。
これからまた新しいスイーツの物語の旅が始まるのかと、元少女の私は勝手に期待している。