それでも、「普通の会社員」はいちばん強い

それでも、「普通の会社員」はいちばん強い 新井健一

読書時間6時間4分(5日間)
文章の難易度★☆☆(読みやすい)
内容の難易度★★☆(ふつう)
「普通の会社員」じゃない人にもおすすめ度★★★

この本の題名を読んだ時、そもそも普通の会社員って誰ぞやと思いまして。
平均的な会社員のことかと思うのですが、実は平均的な会社員自体絶滅の危機に晒されていると思います。
会社員も二極化が進んでいる。
世の中の変化と進化に追いついている人とそうでない人。
この差は大きいと私も会社員をしていて思います。

今、古き良き時代の会社員像が崩れています。
終身雇用と安定というメリットが危うくなり、それによってアイデンティティも大きく揺らぐことになりました。

しかし「これで良いのか」と疑問を持っても、良くも悪くも何もしないのが「普通の会社員」だと思います。
この本にも書いてある通り、会社員が亡くしたものは「安定と従属」の対義語である「『変動と独立』への適応能力」です。

ただ、日本のサラリーマンを何年もやってきたということは一つのスキルだということは改めて自覚して良い点です。
(あえてサラリーマンという言葉が本でも使われています)
本には「地味に頑張れること、基礎学力があり、真面目、親切であること」とスキルの内容が書かれています。

ではこれからのサラリーマンはどうしたら良いのか。
本では8割はそのままで良い、そして残りの2割はどうしたら良いかが書かれています。
その2割で大きく差がついて、さらに二極化が進むと思います。

今までは敷かれたレールの上を走っていればそれで済んだけれど、今からのキャリアは自分で作り、常に更新していく努力が求められているそうです。
自分自身を進化させながら、社会に適応していくことが重要だと著者は書いています。

「今までガッツとか勢い、謎人脈で仕事を何となく引っ張ってきて威張っていた人」が終了し、「きちんと誠実に、信頼のおける仕事をする人」が評価されるようになる、ということだと思います。
まあ仕事において当たり前のことですよね。
逆に今までがどうかしてたとしか思えません。
多様性や働き方改革が注目され、AIとどのように仕事をしていくかが問われ、より複雑化しているように見えた問題。
でも結果残ったのは、仕事を続けることにおいて元々重要視されている本質だったということではないかと思います。

本には自分の強みを理解して自覚し、キャリアは一貫性がなくても良いが自分の信念には一貫性を持つこと、いつやめても良いという状況でサラリーマンを続けられる人が1番強いと書かれていました。

平均寿命が延びている今、これからの人生において「年を取ることで失うものへの喪失感とどう戦うか」と「正しい人間関係を他者と長く築けるか」ということが大きいテーマだと私は考えています。
会社員は各種定年制度が残るため自分で終わりが選べない職種です。
そのため喪失感とどう戦うかは早いうちから考えておく必要があります。

また、会社という組織が辛うじて繋いでいた関係性というのは、退職した途端途切れるものと割り切ったほうが良い。
ここでも喪失と戦うことになりますが、これは正しい人間関係が築けていた場合は続く可能性がありますから。
結局は普通の会社員であろうがなかろうが、その人の人間性が最終的に問われるということはいつの時代も一緒でした。