このプリン、いま食べるか? ガマンするか?

このプリン、いま食べるか? ガマンするか? 柿内尚文

読書時間1時間24分(5日間)
文章の難易度★☆☆(読みやすい)
内容の難易度★★☆(ふつう)
忙しくて時間が足りないと思っている人におすすめ度★★★

ページ数の割に内容が薄いけれど、人生においてめちゃくちゃ大切なことを言っている不思議な本です。

「時間を考えることは、人生を考えること。」
時間の価値にスポットを当て、時間に対しての考え方、実際どう過ごしたら良いのかの指針が書かれた本です。

この本によると、時間には種類が4つあります。
やりたいこと、喜びを得られることをして幸せを感じる「幸福の時間」。
目的のために努力している「投資の時間」。
やらなければいけないことをしている「役割の時間」。
無意識に過ごしてしまうムダだと感じている「浪費の時間」。

浪費している時間を減らし、投資や役割の時間も幸せと感じられるような時間にすること。
意識的に時間を使うこと。
4種類の時間の配分がどのようになったら自分が幸せかを考えて、理想に近い時間の使い方ができるようにすること。
時間の選択基準を作る大切さも本には書かれています。
自分の思考や意思で充実度と幸福度を上げることができる、それが時間だということがわかります。

人生で大切にしなくてはいけないのに、それを忘れてしまうものの一位は時間だと私は思っています。

人はお金のことはすごく節約を気にするのに、時間のこととなると悩みはあるのに真剣に考える機会が圧倒的に少ないと思っています。
そしていつも時間が足りないと感じている。
一般的にお金は何もないところに自然と入ってくることはありません。
何かしらの労働や工夫、所有したものなどからお金が入ってきます。

それに比べて、人間が生まれてから時間はいつも隣にありますから、手に入れるのに努力が必要ないものに感じることがあります。
でもお金と違って、例えば1日を25時間に増やすことはできませんし、未来に使う予定だった時間を今たくさん使いたいということもできません。
つまり、いつも隣にあるけれど、融通は効かず、間違いなく有限で、死がある私達には必ず終わりがあるものです。
そして、この本で書かれている通り、時間は捉え方で大きく性質が変わるものです。

さて筆者についてですが、「コンテンツマーケター」という肩書きだそうです。
私はカタカナ×カタカナ単語を組み合わせた聞いたことない肩書きの人は安易に信用しないことにしています。
だって、怪しいもん。
おそらく私のような人間もいるからか、「聖光学院高等学校から慶應義塾大学」という十分信頼に足りそうな学歴も書いてありました。
でも「このプリン、いま食べるか?ガマンするか?」という、思わず本を手に取りたくなるキャッチーな題名はコンテンツマーケターの筆者らしい(?)ですよね。
そしてこの題名は、今プリンを食べて幸福の時間を過ごすか、ダイエットを考えてプリンをガマンし投資の時間にするかという時間の選択基準と、どちらを選択しても正解であるというこの本で言いたいことの一部をよく表しています。
これもコンテンツマーケターの戦略でしょう。

最初にページ数の割に内容が薄いと書きましたが、これは至極読みやすいということでもあります。
さらっと読めるのに、明日からの生活を明らかに良くできる本です。


我々が生きている世界は、公平や平等はほぼありません。
世界中で公平性や平等が叫ばれるのは、それが理想だと思っていても叶っていないからです。
けれど、時間の与えられ方は唯一と言って良いほど平等です。
それが使い方や奪われ方で大きな格差が出てきます。
だからこそ、日常的に意識を向けるべき存在が時間だということを思い出させてくれる本でした。

さて最後に時計の話をしたいと思います。
スマートウオッチの登場とともに、高級時計なんかに投資するのはアホらしいという価値観が出てきて久しくなりました。
確かにいくら腕時計にどれだけ投資しようが、時間を増やすことはできません。
でも持っている時計で時間の質は変わる、と私は思っています。
高い腕時計が絶対的に時間の質を良くしてくれる保証はありませんが、時間に対する思いは変えてくれます。
時計と一緒にワクワクするような時間を過ごしたいと意識的に思うようになるからです。
自分の行動が自然と変わってきます。
コスパ・タイパというカタカナ略語概念が追い風となって、その価値観をぶっ壊されるなんて哀しい。
そう思うのは、私が腕時計が好きだからかもしれません。