きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」 田内学
| 読書時間 | 1時間38分(6日間) |
| 文章の難易度 | ★☆☆(読みやすい) |
| 内容の難易度 | ★★★(難しい) |
| お金の正体を知りたい人におすすめ度 | ★★★ |
無限にあっても困らないもの、だいたいのことは解決するもの、それがお金である。
私はこの本を読む前も読んだ後も、この考えは変わらない。
しかし「お金の本質とは何か」ということを考えたとき、一般的に皆が思っていることと実際は違うことがこの本を読むとわかる。
私がこの本を読もうと思ったのは「お金のむこうに人がいる」と同じ著者だと知ったからだ。
「お金の本質や経済とは何か」ということであれば、正直「お金のむこうに人がいる」の方が簡潔でわかりやすく面白かった。「お金とは労働力である。そして、好きという気持ちが経済をまわしている」ということが書かれており、私には非常にしっくりきたのである。
もちろん私たちの世界は複雑で、この一言では説明しきれないところもあるのだが、本質というか、核のところはよく表していると今でも思っている。
さて、今回紹介する本は小説であり、そのストーリーの中で、お金と社会の本質をわかりやすく説いている。
中学2年生の主人公・佐久間優斗が、偶然出会った投資銀行勤務の七海とともに、謎めいた屋敷に住む「ボス」と呼ばれる大富豪から「お金の正体」と「社会のしくみ」について講義を受けることになる…というのがあらすじだ。
その講義では、下記のようなことがボスから語られる。
お金はそれ自体には価値がなく、何かを解決するのもお金そのものではなく「人」であり、お金は循環することで社会に価値を生み出すこと。
多くの人々の課題を解決し、格差をなくそうと便利にした人が結果的に富を築いていること。
人から人への贈与、過去から現在、現在から未来への贈与が経済を発展させること。
働くというのは「誰かの役に立つこと」であり、お金を稼ぐためでは決してないこと。
お金を通じて、私たちは多くの人々と繋がっており、お互いに支え合っているのが社会の構造であること。
だれもが自分が所属している社会を作っている一員であるので、それを忘れて思い通りにならないことを「社会が悪い」と思ってはいけない。
未来を共有するという目的をまた共有することが大切であること。
そして、誰かに愛情をもつこと。
愛する人を守ろうと思うと、社会が他人事でなくなり、目的を共有する仲間意識が広がる。
私たちは、お金に縛られたり、人生の選択がお金によって左右されることも少なくない。
しかしそれは、人間が生きる上で本当に大切なことを見失ってしまうことにつながる。
それに警鐘を鳴らしている本なのだ。
お金は大切なものだが、お金自体に価値を見出してはいけない。
お金の本質を知り、自分の意思に従ってお金を道具として使えるようになることが重要で、そのためには、この本に書かれているお金の本質を知ることが近道なのだ。
優しさや思いやり、共感が経済や社会を作るのである。
きれいごとのように聞こえるかもしれないが、それが本来の正解なのだと私は思う。
この本を読むと、いつも以上に働いている人に敬意を表し、優しく接したくなるのである。
七海と同じように、私も「経済は優しくあってほしい」と心から思っている。
