わかったつもり

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 西林 克彦

読書時間1時間48分(5日間)
文章の難易度★★☆(ふつう)
内容の難易度★★☆(ふつう)
わかったという状態を知りたい人におすすめ度★★★

「わかった」と「わからない」の間に「わかったつもり」が存在し、実はこれが一番介なのだ。
これがこの本の主張である。
「わかったつもり」は、本人のなかでは「わかった」状態で、わからない部分はないという意味で安定してしまう。
「わからない」状態であれば、調べてみたり、人に聞いてみたり等、その先があるが、「わかったつもり」ではそれが存在しない。
本当の「わかった」という状態まで至らないので、「わかったつもり」は「わかった」状態を妨害する。

この本では「わかったつもり」とは具体的にどういうことか、例を挙げて説明している。
この本の中にある問題を実際に自分で解くことで、自分における「わかったつもり」がどのように起きているかがわかる。
普通に文章を読んでいるだけでは、意外と細部までは頭にきちんと入っておらず、かなり注意深く読まないと「わかった」状態にならないことに気が付くのだ。

読んだ文章に日本語としてわからない点がない場合、「わかったつもり」は起きやすい。

文章にわからない点がないことと、「わかった」ことはイコールではない。
その文章全体で何を表しているのか、深く理解することが「わかった」状態だ。
この本は他にも、「どういう時に「わかったつもり」が起きやすいのか」を説いている。
そして、その「わかったつもり」から先に進み、最終的に「よりわかった」状態になることがどのようにしたらできるのかの説明もある。

また、文章を読み解くポイントもこの本を読むとわかる。
高校受験の現代文が異常に難しいと思う、あれの解決に乗り出している。
テストでは、書いてないことも想像しなくはならず、筆者と自分の考えが合致していればいいが、そうでない場合、下手したら全滅する可能性だってある。
多くの受験生にとって、デッド・オア・アライブの科目である。
これは「整合性」にフォーカスすることで、解決すると言う。
自分の想像力は一時的に置いておき、選択肢と文章の間に整合性が取れるかどうかで正解を判断するのだ。
そして、その解釈の撃合性はただ一つだけとは限らず、整合性が合えば別の解釈もまた正解になる。
しかし、周辺の記述や他の部分の記述と不整合である場合には、その解釈は破棄されるのだ。
残念ながら、現代文が難しいのに変わりはない。
文章を読み解くというのは、ある種理系の考え方が活かされているように私は感じる。

こんな風に文章を読んでいて楽しいのか、という疑問も湧いてくる。
読み手が想像することは叶わないのか。
想像することや仮定することは、文章を読むうえで、すごく楽しい旅のひとつなのに。
安心してほしい。
整合性が取れている、という条件をクリアしていれば、想像や仮定の内容も無限であるとこの本でも了承が出ている。

しかし、これはあくまで文章を読むうえでの話であることを忘れてはいけない。
こういう考えで、そのまんま人とのコミュニケーション、つまりは他愛ない会話に臨む困った人がいるのである。
なまじ自分は頭が良いと思っている人に多いから面倒臭い。
人間は良い意味で多面的な側面を持っている。
相反する感情を同時に持つこともあるし、さっきまでこの世の終わりかと思っていたのにケロッと有頂天になることも珍しいことではない。
それが人間の面白さや愛しいところでもある。整合性なんてないから人間らしくていいのである。
それが「わからない」なんて、それこそ厄介なものである。