書いてはいけない

書いてはいけない 日本経済墜落の真相 森永 卓郎

読書時間2時間13分(7日間)
文章の難易度★★☆(ふつう)
内容の難易度★★☆(ふつう)
日本はこれでいいのかと考えている人におすすめ度★★★

私は都市伝説や陰謀論が好きで、SNSやエッセイ、記事など目についたものはもれなく読んでしまう。
みんながトンデモだと思っていたことの中に、真実が眠っていたということが稀にあるから、というのが理由の一つだ。

都市伝説や陰謀論は基本的には事実ではない(ということになっている)。
だからこそ、そういうカテゴリーがあるとも言える。
問題は、「真実だと認識されてしまうと非常にヤバい、よって都市伝説とか陰謀論とか呼ばれるカテゴリーに無理やりポイされるやんごとなき真実」が世の中にはあるということだ。

これは、そんな「真実」に切り込んだ本である・・・。
と言いたいところだが、この本に書かれた内容、ジャニーズの性加害、財務省のカルト的財政緊縮主義、そして日本航空123便の墜落事件の3つは、もはや陰謀論の域を超えてしまっている。

どちらかというと「みんながうっすら事実なのではと思っているけれど、関係者は否定していたり、口をつぐんだりしていたため、明確な根拠と呼べるものが見えず、忖度や長い物に巻かれた結果、表に出てこなかった何か」である。
陰謀論より「暗黙の了解」まで来てしまっている内容なのだ。

単なるタブーの話題というだけでなく、ほぼ真実認定されているからこそ多くの出版社に発刊を断られたのだろうし、最終的にこの本になって流通し、我々一般市民が手に取っているのがすごいことだと思っている。
暗黙の了解は「公の場所」で口に出せないからこそ、その性質を保てる。
そういう意味で、今でも本というメディアは、噂話やSNSとは一線を画すところだ。
様々なメディアが入り乱れている現在でも、本は「公のメディア」であることを、この本を通して改めて感じた。

そして、昔はただの陰謀論と一蹴されていた内容に、時代が追い付いてきた感はあると思った。
インターネットやデジタルの普及によって、人間は気軽に多くの情報を得られるようになった。
情報が溢れ、個々人がメディアを持ち、発言ができるようにもなった。
有識者や専門家との心理的距離も近くなっているし、何より三人寄れば文殊の知恵がある。
直接は一生会うことが叶わなかっただろう人同士がネット上で交流し、持ち寄ったパズルのピースのように事の全体が浮かび上がっていくこともあるだろう。
国家単位で隠せていたことが、少しずつメッキが剥がれ、露呈せざるを得ない状況になってきた。
だから、陰謀論から暗黙の了解へと昇華していた事柄がある。
満を持して出てきた本である。

また、森永さんが「死を意識した使命感」のようなものからこの本を書いたのもなんとなくわかる。
不謹慎ではあるが、それは説得力にもブーストをかけていたと思うし、だからこそ出版できたのかもしれない。
そして森永さんは、私がこの本を読んでいる間はご存命だったが、一昨日お亡くなりになった。

当事者個人の苦しみや哀しみを軽視し、大きなお金や権力を理由に目を瞑った結果、残酷な社会構造が根付いてしまった。
そして、真実を認めて楽になりたくても、それは到底できないようなことを過去に積み重ねてしまったゆえ、未来まで苦しむことになっている。
結局情緒的なものを失っただけでなく、経済的にも自分たちの首を絞め続けているのではないか。
私たちは、自由で民主主義の世界で生きているような気になっているが、そうではない。
力の強いものに支配されて、弱いものは泣き寝入りするしかないのだろうか。
それで果たして、私たちは本当に幸せに生きていけるだろうか。