アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した~潜入・最低賃金労働の現場~ ジェームズ・ブラッドワース
読書時間 | 3時間9分(6日間) |
文章の難易度 | ★★☆(ふつう) |
内容の難易度 | ★★☆(ふつう) |
ギグの実態を少しでも知ろうとしている人におすすめ度 | ★★★ |
アマゾンの倉庫、訪問介護、コールセンター、ウーバータクシー。
英国の「最底辺」労働に著者自らが就き、その体験を綴ったルポタージュだ。
全編を通し、グローバル企業による「ギグ・エコノミー」という名の搾取について書かれている。
フリーランスの単発の仕事(ギグ)によって成り立つ急成長中の労働市場を「ギグ・エコノミー」と言う。
この仕事は出来高払いのフレキシブルな業務で、携帯電話のアプリを通して割振られることが多いと言う。
雇われている側も、好きな時間に好きな仕事ができる自由があるように思え、一見企業と雇用される者(もしくは個人事業主)がウィンウィンの関係に見えるが、そう甘い話ではない。
雇い主が労働者とその生活を食い潰すような仕組みになっている。
問題は労働力と時間の搾取だけではない。
最終的には資本だけでなく、心身の健康や文化すらも搾取されているのがこの本を読むとわかる。
また、各仕事の内容とともに、炭鉱夫達の労働の歴史から今に至る過程と、移民労働者への現地人の不満についても書かれている。
マルクスやオーウェルが予言した資本主義、管理社会の極みである。
一層の格差拡大となるのがわかる。
問題はカーストの上には上がれないのに、落ちる時は早くて簡単であることだ。
格差社会が広がると、下級労働者は何もかも搾取されるだけ搾取され、どんどん人間らしい生活と切り離されていく。
その姿がこの本では痛いくらいに浮き彫りになっている。
果たしてこれを傍観していて良いものなのか。
そして、日本にとって、これは対岸の火事ではない。
いずれこのような社会になりうる。
遠い国で起こっている出来事として見ていられる余裕は日本にはない。
ちなみに、今、あんまり元気でない人や共感性疲労を起こしやすい人にはおすすめしない本。
あまりに具体的に仕事の内容や報酬、労働環境と住環境などが書かれているからだ。
それくらいルポとしてはよく出来ている、ということなのだが。