眠っている間に体の中で何が起こっているのか 西多 昌規
読書時間 | 2時間53分(8日間) |
文章の難易度 | ★☆☆(わかりやすい) |
内容の難易度 | ★★☆(ふつう) |
睡眠中の自分の身体のパワーを知りたい人におすすめ度 | ★★★ |
突然眠れなくなったことがある。
仕事のストレスで、身体にも支障をきたしていた時だった。
それまで眠るということに問題を抱えたことがなく、どちらかというと気絶のように眠っていた。
眠ろうとして横になっても、部屋を暗くしても、何をしても目が冴えてしまって眠れないということが自分に起こるなんて思っていなかった。
これが睡眠について考えるきっかけになった。
いったい身体の中は寝ている時、何が起こっているのか。
この本は、睡眠の基本的なメカニズムに触れた後、内分泌系、免疫系、消化器系、呼吸器系、循環器系、脳神経系、筋骨格系、泌尿器系、皮膚の各々で、人間が眠っている間にどのように働いているのかが書かれている。
(良い睡眠の取り方、というようなことはこの本の領域外となる)
私は「睡眠は脳も含めた身体を休ませるため」と単純に考えていたが、身体の中では想像を超えた複雑なことが起こっていた。
「とにかく今すぐちゃんと寝なきゃいけない」
当たり前のことなのだが、これがこの本を読んでまず思ったこと。
良質な睡眠を取れないことは百害あって一利なしだった。
人間は起きている時のことは気にしても、睡眠を何もしていない時間と軽く考えてしまうことがあるのではないかと思う。
しかし、身体は起きている時と同じ、もしかしたらそれ以上に複雑に働き、身体を健康に保ってくれようとしている。
本の冒頭で筆者はこう書いている。
「あまり知られていないかもしれませんが、ほぼ全ての精神障害には、不眠あるいは過眠、日中の強い眠気など、睡眠の問題が伴います。憂うつや不安などは把握が難しく、どうやって治療していくか手探りで進める中で、睡眠を良くすることが、治療への確実な第一歩になることに興味を覚えました。不眠をどうにかすれば、患者も医者も『なんとか良くなりそう』という期待が湧いてきます。」
強い精神的なストレスも睡眠を整えることで、改善が見られることがあるそうなので、睡眠のメカニズムを詳しく知ることはその手助けにもなるのではないかと思った。
また、この本では何度か「睡眠時無呼吸症候群」の危険性に触れられている。
突然死の可能性だけではなく、高血圧、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病などを引き起こすリスクを上げる。
そして、眠りが浅くなることで睡眠によってもたらされる身体への恩恵のバランスが崩れることになる。
自分では自覚がないこともあるので、これは注意したいところだ。
老後の社会からの孤立も、睡眠不足は無関係ではない。
読んでいて、おいおい飛躍しすぎではないかという気もしたが、睡眠不足によって脳の老化および表情や皮膚(見た目)の変化が引き起こされ、それによって孤立してしまうことがあるそうだ。
さて、この本には「メカニズムはまだよくわかっていない」と書かれていたことが何ヶ所かある。
科学の進歩で人間はほとんどの謎が解明されていると勘違いしがちだけれど、実は自分の身体の中で起こっていることすら説明できないことがある。
これが面白い。
人間の奢りに喝を入れてくれる気がする。
そして良い睡眠の定義がほぼないと言っていいところも面白いところだった。
筆者は「『まあよく眠れた』と思えていて、日中に元気に活動できていれば、それが『良い睡眠』です。」とのこと。
時間も個人によって大きな差と柔軟性がありそうだ。
これを読んでくださっている今、何時でしょうか。
夜だったら、すぐ寝ていただきたい。
おやすみなさい。