小売り広告の新市場 リテールメディア 望月洋志、中村勇介
読書時間 | 2時間55分(4日間) |
文章の難易度 | ★★☆(ふつう) |
内容の難易度 | ★★☆(ふつう) |
新しい広告の形を知りたい人におすすめ度 | ★★★ |
リテールメディアという言葉は聞いたことがあって、どうやら小売広告らしいことは知っていたのだけれど、それがどんなものかは全く知らなかったので、読んでみることにした本です。
リテールメディアは、一言で言うと「小売業の広告」。
この本で定義されている内容を下記に引用します。
(1)小売を主体とした、顧客と接点を持つメディア、またはプラットフォーム(2)コンテンツ/広告の配信管理および検証が可能なもの
(3)購買情報との連係は任意とする
詳しいことはぜひ本を読んでいただきたいのですが、要は顧客情報と購買情報を使って効果的な広告を出して売上を上げ、収益化するシステムでしょう。
購買情報とは連係は任意とされているのですが、実例を見ていると購買情報を連係した方が分析の発展性が明らかにあると思います。
どんな施策をしたら、どんな購買意欲や結果が出るかということですね。
本を読んで思ったのは、顧客情報とそれに紐づいた購買情報データの分母が多いことが前提である、と言うこと。
リテールメディア先進国アメリカでも成果を上げているのはアマゾンとウォルマート、日本ではセブン&アイ、ツルハグループなどのようですから、どうしてもデータ量が多いこととその情報が一元化されていることが前提となると思います。
データを持っていても、整理されていない日本企業も多いと聞いたことがあります。
本ではリテールメディアの開発支援まで触れていて、データの分母が少なくても挑戦できるような仕組みもあることが書かれています。
でも本を読む限り、それだと一過性の結果になりやすく、長期的な効果や事業を展開するとなるとそのための工夫がもう一段階何かしら必要になる気がします。
あと、小売業も多岐にわたっています。
ラグジュアリーなブランディングと同時に展開するのが難しい仕組みだと思いました。
スーパーやドラッグストアなどはクーポンを発行することで購買意欲を測り分析できますし、広告を設置する場所や方法も多様なチャレンジができると思います。
ラグジュアリーブランディングを重視するお店だとその多様性を担保することが難しいことがありますから。
話は変わりますが、私が想像する広告というと、CMや街の看板や電車の中吊りで、良い広告はクリエイティブなものという印象がいまだに強いです。
最たるものがパルコのCMで、CMだけ見ているとパルコが一体何を売っているのか、どんな建物なのか、どこにあるのかはわからないのだけども、パルコの哲学はよくわかる。
何より見ていてワクワクしたんですよね。
この本を読んでいるとき、そういう広告はもう出てこないのかもしれないと思いました。
それはそれで少し寂しい気もします。
私も小売業の会社に勤めているので、この本に書いてあった「小売りは『変化対応業』である。」はその通りだと思っています。
変化を知ること、それに対応しようとする姿勢が必然となるのですが、言うは易く行うは難しですね。
なんでもそうでしょうか。