運動しても痩せないのはなぜか ハーマン・ポンツァー
読書時間 | 7時間57分(8日間) |
文章の難易度 | ★★☆(ふつう) |
内容の難易度 | ★★☆(ふつう) |
運動しているのに痩せない人におすすめ度 | ★★★ |
「運動している以上に食べてるからだよ!」と思った方、この本を読む前の私と全く一緒です。
運動をすると消費カロリーが増えるので、その分痩せる気がするけれど、運動して消費カロリーが増えても実は痩せない。
なぜなら身体がその消費カロリーに最適化していくから。
というエネルギー代謝学の話です。
代謝とは、人体がどのようにエネルギーを燃やしているかということ。
そしてヒトの代謝戦略がどう進化してきたかが書かれています。
1日の活動レベルは1日の消費カロリーとほとんど関係ないことがわかっているそうです。
つまり極論すると、動こうが動かまいが消費カロリーと因果関係がない、ということ。
世間のダイエット論法に飛び蹴りをくらわす内容ですが、この本はダイエット論争と人類の進化両方に答えを出すことが書かれています。
なぜ運動しても痩せないのか。
身体活動が活発化すると、身体がなんとかやりくりしようとして(簡単に言ってしまうとエネルギーの節約、みたいなものですね)消費量が一定の狭い範囲に収まるように最適化されるそうです。
加えて消費カロリーが増えると食欲が増えて、食べるようになる。
これは経験からも理解できると思います。
カロリー消費量は体重の変化を決定するのではなく、体重の変化に反応するのです。
私たちのフィーリングの逆です。
身体って賢い!!
では運動しなくてもいいじゃないかと思ってしまうのですが、そうではないのです。
運動しても痩せないけれど、運動しないと健康になれない。
身体は進化してエネルギーの最適化はされるけれど、もともと狩猟や採取していた時代の活動量をもとに身体はできているから、運動しないとカロリーが余ってしまうということになるのです。
痩せるかどうかで運動をするかどうかを決めてはいけないとうことですね。
生物の授業中、半分意識はどこかへ飛んで行っていた私には、途中の消化の仕組みや臓器のことや用語解説のページを読むのが辛かったけれど、そこを過ぎると内容が面白くなります。
人間の代謝の進化の話が最後は化石燃料と気候変動、SDGsっぽいところまで話が及んで話が終わります。
今までの常識だと思っていたことが研究によって覆されるのはすごく面白いことです。
大人になると、ある程度経験値や知見も増えた気になっていて、なんとなくこうじゃないかなと判断できてしまうことが多い。
でも、そういうことばかりではない。
世の中はそんな簡単にできていないということでしょうか。
だから、こうやって本を読んで勉強する面白さがある、ということを改めて考えた一冊でした。