昨日(2024年9月11日)、New Jeansが緊急生配信をした。
この背景には重い事情がある。
このサイトでは「読書」について書いているが、私はその向こうにある「知性」や「幸福」、「人間の真理」などを考えているつもりなので、全くかけ離れた話でもないと思っている。
完全に外野であるし、ましてや海外の会社のことなので、私が見て感じた範囲の話となるのはご了承いただきたい。
この事件の発端は、簡単に書いてしまうと、韓国の大手芸能事務所「HYBE」がその子会社「ADOR」と揉めている、ということだ。
HYBEはBTSを世に出し、一代でここまで大きくなった会社である。
BTSはHYBE傘下および前身のBIG HITから誕生したグループだ。
ADORもこのBIG HITと同じようなレーベルの一つでHYBE傘下の子会社だと思っていただきたい。
説明が足りない部分もあるが、全く何も知らずに読む方にもざっくりご理解いただきたいので、このくらいの説明にしておく。
ADORは、New Jeansを生んだミン・ヒジン女史が直近まで代表をしており、彼女はNew Jeansのプロデューサーかつ「お母さん」のような存在である。
ミン・ヒジン女史は、韓国大手芸能事務所 SMエンターテイメントでもアートディレクションで実績を上げており、鳴り物入りの如くHYBE系列に引き抜かれたはずだった。
抜け感のあるキャッチーな音楽と、徹底した世界観の構築により、一昨年New Jeansはデビュー年ながら異例のヒットをたたき出した。
昨年日本でも、日本デビュー前から紅白歌合戦に出場していたのは記憶に新しい。
私も彼女たちが出てきた時は、皆と同じように「これはすごいグループが出てきたな」と思ったし、Music Bankのデビューステージ「Attention」は本当に特別だった。
何ならメンバー全員、今より魅力的だったと私は思っている。
あのステージ以上のデビューパフォーマンスをするグループはそうそう出てこないだろう。
しかしもともと、ミン・ヒジン女史とHYBE の経営陣の折り合いが良くなかったようで、今年の4月、騒動が表沙汰になった。
HYBEがミン・ヒジン女史の独立を画策した背任を理由に代表辞任を要求、最終的には裁判にまで発展したのである。
これに対して、ミン・ヒジン女史は伝説の「(ごめんだけど)HYBEのクソジジイども」会見を開いて、背任は事実無根、むしろ酷いのはHYBEの方だと抵抗し、見事勝訴した。
しかしながら、腹の虫がおさまらないHYBEは、ミン・ヒジン女史をNew Jeansのプロデューサーとしては仕方なくそのままにしつつ、代表から引きずりおろし、腹心の代打を代表にしたのである。
この騒動の中、私が知っている限りの内容でも、メンバーの個人情報が流出したり、New JeansのYouTubeコンテンツがなぜか成人制限がかかったり、デビュー前の映像が突如 SNSで拡散されたり、謎(という名の策略だろう)騒動も次々に起こっていた。
どんどんメンバーは窮地に追い込まれていったと考えられる。
そこで昨日、とうとうメンバー本人たちの口からHYBEにどういう扱いを受けているのか、ということが緊急生配信で語られ、ミン・ヒジン女史を代表に戻してほしいとの懇願があったのだ。
どうやら新設されたYouTubeチャンネルを通してのライブ動画だったらしいのだが、アカウントも動画もすぐに消されてるそうだ。
彼女たちはこの会見をしない方が絶対に良かったと私は思っている。
彼女たちは立派なアーティストとは言え「会社に所属している一員」に過ぎない。
良くも悪くもHYBEという会社の投資がなければ、今のNew Jeansの地位を築けるような大きいリターンもなかっただろう。
何か思うところがあった時に組織に所属している一員ができることは、社内のしかる部署に報告し、それでもダメなら法的手段をもって抵抗する、というのが正しい流れだと思う。
自分たちが思い通りにならないことがあったとして、それを最終的にネット配信でオブラートにも包まず暴露するような社員は、一般的に考えたらただのモンスター社員である。
彼女たちは「所属会社に手段を選ばず反旗を翻した」ことになってしまう。
理由があったとしても、これから先わざわざそういう人と素敵な仕事をしようとはならないのが社会というものである。
しかし、そんなのは彼女たちだってわかっていただろうし、それを考えてもこうやって訴えるしか方法がないと判断したのだとも思う。
つまり追い詰められていた、という言葉が一番形容として正しい気がする。
これはHYBE、ADORとも周りの人間が悪い。
特に彼女たちはプロと言っても、年齢は20代前半、10代だっている。
彼女たちに限らず、若い時は尖って突っ走っているのが眩しいところだと私は思っている。
それを黙って見守れないような内容になった時は、周りの大人が嗜めるべきだ。
ちなみに私はミン・ヒジン女史の自由な暴走会見は、本当にしてよかったと思っている。
彼女は当時代表であり、トップとトップの激突だからである。
そして、表立っては言われなかったが、男性VS女性の戦いでもあった気がする。
黙っていたら、立場が弱い方が負ける。
資本があり、頭が切れる方が勝つような仕組みに世の中なっている。
私は品性と知性を重んじるが、ここではそんなこと言っていたら、その時点で負ける。
皆が想像しているのと、本人が事実を語るのは、たとえ事実が変わらなくても、全く違うことだ。
何か嫌なことをされたり言われたりしたときに、黙っていることや、すぐに忘れることが「大人の対応」で良きことという風潮が私は大嫌いである。
もちろん、大概のことは黙っていたり、忘れてしまったりした方が良い。
しかし、言わなければいけない時に言わなかったり、抵抗するべき時にしなかったりした時に、後世に渡って多大な損害が出ることがある。
それは自分の人生も他人の人生も悪い方に変えてしまう。
私が今回の騒動を見て言いたいのはこれだ。
何が本当で、何が嘘かはわからないが、それを加味しても、今回の騒動を見るに、HYBE内部では経営陣が気に入らない人を無視しようとしたり、攻撃したりする風潮がある可能性が高い。
ということは、ここまで会社が大きくなるまでには、その被害にあった人が少なからずいたはずである。
言うのがアホらしかったり、声を上げる事で余計辛い思いをすることを想像したり、一刻も早く縁を切りたいという思いがあったりしたのだと思うが、その人たちはひっそり辞めていった、もしくは我慢して働き続けているのだと思う。
もしくは、会社に揉み消された可能性もあることは理解している。
しかし、その「何も言わなかったこと」が果てにはこの騒動を引き起こし、莫大な売り上げを計上し会社に貢献した、かつ青春に手にできるはずだった様々なものを手放し、ファンと自分の夢のために今なお努力をしている若いメンバーが深く傷つくことにつながったのではないかと思う。
何かを言わなかった人たちを責めているのではない。
ただ、未来のためにできる事を簡単に放棄してはいけないという事を、私も、読んでくださっているあなたも、忘れてはいけない。
ここから学ぶべきことは、人は自分の為にも、後世の人のためにも、きちんと正しい方法で声を上げなければいけない時がある、ということだ。
長いものに巻かれて、強いものにヘラヘラする人生だけは歩まない方が良い。
そのためにも私たちは今日も本を読み、知恵をつけるのだ。