キーエンス解剖 最強企業のメカニズム 西岡杏
読書時間 | 2時間17分(4日間) |
文章の難易度 | ★☆☆(読みやすい) |
内容の難易度 | ★☆☆(わかりやすい) |
年収が高い会社のことが気になる人におすすめ度 | ★★★ |
人間は怠惰なものだ。
努力することが美しく素晴らしいことだと頭ではわかっているのに、どうしていざとなるとこうもできないものなのだろう。
息をするように努力できる人とそれ以外の人では大きく差がつく。
正しく努力できるというのは、一番大切な能力の一つであるように思う。
さて、今回はキーエンスという会社の本を読んだ。
私も人間の例外に漏れず怠惰で、できるなら寝ている間にお金が入ってきて欲しい。
ぼんやり一日過ごしてお給料が入ってくるというのが理想だ。
ゆるゆる楽に生きて、まあまあのお給料が入ってくるのが一番幸せじゃないかと思ってしまうのだが、この理想と「憧れ」というのは少し違う。
こんな私でも平均年収が高いと言われるキーエンスは憧れる会社の一つだ。
今日び年収が高いということは、猛烈に仕事をして結果を出し、利益を取ってくる人達の集まりだということだと思う。
そんな体力も能力もないのはわかっているが、憧れる。
すごく憧れる。
この本では前身のリード電機から現在のキーエンスがどのようにできたのか、キーエンスの目指す哲学的なエピソードをもとに紹介している。
内容を簡単に下記にまとめてみる。
・情報を資産と考えている印象で、属人化せず、全員で共有する。
・1人のエースやカリスマが会社を引っ張るのではなく、チーム戦で勝つ。
・時間も意識されていることの一つ。
・カタログに掲載している商品は全て当日出荷が可能。商品数は一万種以上。
・粗利は8割以上。
・「こうしたら良いと思ったこと」をできるようにする。
・実演販売を重視しており、その際ソリューション提案ができる。
・「製販一体」。自社商品のことを熟知した営業がコンサルティングをしながら、ニーズの裏にあるニーズを探る→企画や開発はその情報を参考にしつつ、顧客に提供する付加価値を最も大きくすることを追求した商品を開発する。
社員一人一人が過密スケジュールで仕事をしていて、問題意識、目的意識、目標を見失わないような社風であることがこの本からわかる。
勉強すること、練習すること、行動すること、社会人になったらしなくてはいけない「当たり前のことを徹底している」。
しかし、当たり前のことを当たり前にできないのが怠惰な普通の社会人だ。
表面だけ見て「キーエンスのようにはできない」と何もしない人が一番厄介な私達普通の人々である。
できないことよりも、できることを探すのが社会人なのに、こんな簡単なことができない。
本当に見習うべきところは、仕事に対する姿勢のはずなのに。
と、同時に思うのは、キーエンスの社員の方は一人一人が優秀で会社に合っている必要性はあるけれども、どうしてもその人でなければならない必要性がない組織だと私には見える。
もちろん会社という組織は「この人がいないと潰れてしまう」と思っていても、その人が辞めても回っていくところだということは知っている。
しかし、あの人がいれば違ったのに、ということには何度か出くわしたことがある。
この本を読む限り、そういうことが起こりにくく仕組化されている。
少し意地悪な言葉を使うと、志願者も多いだろうから、人の代替えが効いてしまう組織に見えた。
しかし、粗利8割はびっくりする。
小売業の立場から見る正直な感想だと、どんなぼったくりかと思ってしまう。
また、即日出荷できるように在庫を抱えるというのも、怖すぎる。
これはキーエンスにしかできない選択と言って良いと思う。
「キーエンスの仕組みは、『人は油断することもあるし、ラクをしたいと考えるものだ』という“性弱説”に基づいている」そうだ。
結局私のような怠惰な人間と、息をするように努力ができる人の違いは仕組みの差なのだろうか。
多分違うと思うけど。