人口は未来を語る

人口は未来を語る ポール・モーランド

読書時間5時間46分(5日間)
文章の難易度★★☆(ふつう)
内容の難易度:★★☆(ふつう)
人口と労働力と国力の関係が気になる人におすすめ度★★★

日本はなぜこんなに疲れているのか。
私が常々感じていることである。
例えばアメリカはどうして活動的に見えるのか。
人口の差なのか?
アメリカが強い理由は色々あるが、一つは人口が今のところ右肩上がりということにあると思った。
人口はざっくり言うと労働力だもの。
労働力は資本なので、間違った考えではないと思うのだ。

と言う訳でこの本を読んでみることにした。
人口を勉強すれば世界経済の未来も見えてくるはず。

教育の発達(特に女性の)と医療の進化(乳児死亡率の低下)は出産回数が減る傾向を作る。
もちろん文化や宗教の影響による多産はあるものの、世界的に見れば少数派になる。
人口減少はなにも日本だけの問題ではなく、実は世界的な現象だった。
人口が増え続けていた頃、食糧難になるといわれていたことが懐かしい出来事になってしまった。

この本は、世界的に人口がどういう変化をしてきたかとその原因、世界的人口の現在、そして未来予測をわかりやすくまとめた本で、とても面白かった。

少子高齢化は日本だけの問題ではなく、世界的に広がっていくだろう現象だった。
また、寿命は階級差が出ている。つまり所得によって決まる傾向が世界的にも高くなっている。

これから都市の人口集中と地方の過疎化はより進む。
老人の面倒を見てくれる若者は都市にいる。
その都市に老人も移動しないと生きていくのが困難になるからだ。
そうなるとその都市の盛衰が人口動態(ある一定の期間における人口の変動)を決める。

政策によって出生率を下げることはできるが、上げることは難しい。
これはもう統計で出ている。

ではこれからどうしたら良いのか。
「移民を許容しない限り、人口は増えない」など移民政策が進まないことを憂うコメンテーターの発言も聞いたことがあるが、この本を読んだ私は、移民政策は少なくとも日本ではうまくいかないだろうと思った。
それは日本人の文化的な情緒だけを言っているのではなく、まず日本は海に囲まれているので移民の移動手段の「足」がそもそも難しいと言うこと。
海や川で溺死するのもよくあることらしいのだ。
つまり、生き残りを賭けている面が多い。
また、もし移民の受け入れが一時成功したとしても、その移民はその土地の文化に融合する傾向 にあるため、移民の人々もいずれ少子化になっていく。
一時的には人口が増えたとしても根本解決には至らない。

日本は婚外子に寛容になり、保障を強化するくらいしか道は無くなっている。
しかも、日本人は「母としても働き手としても満たされない女性が多い」という。
その状況において、子供をもっと産もうとしてもらうのはかなり無理があるという結論しか出てこない。
この国の元気が無くなっているのは当然と言えば当然の結果だった。

デンマークやスウェーデンの出生率は50年来ほぼ変わっていないそうなので、この国の政策を見てみれば、もしかすると答えがあるのかもしれない。

人口の減少傾向は、外的要因ではなく、人間自身が行う選択によってもたらされることになるということだ。

最後に話題は変わるが、この本を読んで印象に残ったことを2つ書いておく。

まずはイスラエルの現状について。
イスラエルは1人の女性が平均3人子供を産んでいる。
民族性も経済力も維持しながら多産文化に助けられて出産率が上昇している例はイスラエル以外にはないそうだ。

次に若者が多い国や地域は、戦争や革命が起きやすいということ。
若いということはパワーがある、ということだ。
なるほど。