モヤ対談

モヤ対談 花田菜々子

読書時間4時間20分(7日間)
文章の難易度★☆☆(ページ数は多めだけど、対談なので読みやすい)
内容の難易度★☆☆(重いテーマも対談形式でわかりやすい)
私の幸せって結局何だっけって思っている人におすすめ度★★★

情報も物も人でさえも選択肢がものすごく増えた現代、今までこうなれば幸せだと言われてきたことが「いやいやそうでもないぞ」と崩れてきたことには、みんなも薄々気付いていた。
でも今尚残る、偏差値の高い学校行って、年収が高い会社に入って、結婚して、子どもが生まれて、家族仲良くて、家を買って、みたいな「これが正しいと刷り込まれた幸せ」と「その幸せを手に入れられないことに苦しむこと」に一石を投じてくれるような内容でした。

ドラマ化されて大反響をよんだ『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』の著者で、「蟹ブックス」を経営する名物書店員の花田菜々子氏が20名のゲストを招き、さまざまなテーマについて語り尽くした対談集

amazonより

どの対談を読んでいる時も感じたのは、日本人の中の目に見えない差というものがついてきているな、ということ。
変化を敏感に感じている人とそうでない人は絶対に埋められない見えない壁ができてしまっている気がします。

誰しも自分の所属しているコミュニティだけで生活していると、外の世界では何が起こっているか、メディアを通して事象は知っていても、理解することが難しいのかもしれません。

時代の変化、技術の進化、価値観の多様性など、経験値が足りなくて頭が追い付かないことがあります。
長らく世の中の秩序を前提とか常識とかの制度的なもので守ってきたけれど、それってもう今の状態だと無理だよねって限界がきて破綻しかけていて、今度はいかに他者や多様性や矛盾を許容し、すり合わせて幸せを見つけていくかということに世の中が変わりつつあることを改めて考えるための本でもありました。

現代の心の問題にも切り込んでいるけれど、これは現代だから出てきたのか、それとも隠れていたものが今出てきたのかは私もよくわからない。

あと、何かを正直に考えることの大切さも改めて感じました。
自分でアウトプットする時って、なんとなくきれいなことにしちゃうじゃないですか。
でも、嫌なこととか好きでないことや違和感も自分の感性として守って良いんだなと思える本でした。

永井玲衣さんとの対談に「わからない」という感想は「だめなこと」じゃなくて、そこから何かをもっと奥深く知ることができる機会だって書いてあって、いいなと思いました。
「『わからない』の先にある奥行きを信じる」って表現が使われています。
すごく素敵ですよね。

幸せはどんな形でも良い、ということ。
幸せって何かを手に入れたら必ずなれるものじゃなくて、どんな状況でも、考えて悩んで真摯に向き合った人に訪れるものだよという普遍的なことを思い出しました。